これは何!?昭和遺産・銀座のカプセルタワービルに潜入 廃墟マニア注目も内装はポップ

 ありゃ何じゃ?東京は銀座8丁目、首都高のそばにSF映画さながらの建物がそびえている。建築家・黒川紀章氏の設計で、1972年に建てられた集合住宅「中銀(なかぎん)カプセルタワービル」だ。カプセル部分の室内では個性的な人たちが日々を過ごす。その中の1人、コスプレDJにして2児の母である「声(こえ)」さんの部屋を訪ねた。

 廃墟マニアにも注目される外観とは対照的に、声さんの部屋は白で統一されたポップな内装だった。大きな円窓を背にターンテーブルが2台置かれ、周囲にはアニメや特撮映画のレコードや怪獣のフィギュアなどが整然と置かれている。床面積は約10平方メートル。ユニットバスは物置き代りとし、飲み物を冷やすワインセラーも備える。秘密基地にいる感覚になった。

 声さんは広島県呉市の出身。漫画専門店「まんだらけ」のコスプレ店員として話題になり、写真集やDVDをリリース。近年は「マタンゴ」や「ジャングル黒べえ」などのコスプレでアニメや特撮などのレコードを回すDJとして活動する。カプセルタワーには2018年からセカンドハウス的に入居。「この部屋でDJの練習をし、コロナ禍の前からツイキャスでライブ配信しています」という。

 上京当初から気になる建物だった。3年前に家族と訪れた名古屋のレゴランド・ジャパンで同ビルを再現した作品を見て思いが再燃。「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」代表の前田達之さんが所有する部屋を現在はマンスリーの家賃9万円(光熱費込み)で借りている。

 黒川氏が「メタボリズム(新陳代謝)建築」として設計したビルは、2本のシャフトに計140個のカプセルが取り付けられている。そのうち15個を所有する前田さんは当サイトに「世界初のカプセル型住宅で、カプセルを交換することができるメタボリズム思想の発想がいまでも斬新。この建物が引き寄せる個性の強い住人が面白い」と魅力を語る。

 声さんは「元々はビジネスマンの方が平日、都心で働いてここで寝泊まりし、週末に自宅に帰るというコンセプト。今はテレワークの部屋としてコロナの時代にぴったりだと思います。壁と壁が面していない構造で音が伝わりにくいという点から音楽の配信にも合っていて、この建物が好きなプロのDJの方にも出演していただいています」と説明した。

 当初、カプセルは25年に1度交換される予定だったが、それは実現することなく来年で半世紀を迎える。実は数年前から建て替えの話が浮上している。

 前田さんは「本来は保存を前提とした企業に建物1棟を購入いただき、当初のコンセプト通りカプセルを交換して使い続けてほしい。もし、解体しなければならないのであれば、取り外したカプセルを他の場所で使用したい」と思いを明かす。声さんは「リノベーションがうまくいけば大いに活用できる。1回壊してしまうと2度と作れないことを考えると、すぐに壊さないでいて欲しい」と願う。

 存続か解体か?その狭間で揺れつつも、都会のど真ん中に根を下ろした「昭和の遺産」は、揺るぎない現実として、そこに立つ。(デイリースポーツ・北村泰介)

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