ピンク映画は今…求められるモラル、根強いファンも 切通理作氏が語る

ピンク映画にも“モラル”が求められています(Pixel-Shot/stock.adobe.com)
2枚

 評論家の切通理作氏(56)が責任編集を務めた「別冊シネ★まみれ-第1回ピンク映画ベストテン特集号」が今月、発行された。同ベストテンは2019年限りで「ピンク大賞」が終了したことを受け、ピンク映画ファンの同氏が業界活性化を願い昨年に設立。特集号はコロナ禍の影響で大幅に遅れたが、第2回ベストテンの告知を兼ねてようやく完成した。

 移り変わるピンク映画の現状と魅力とは-。『宮崎駿の〈世界〉』でサントリー学芸賞に輝き、キネマ旬報でピンク映画時評を連載している切通氏に聞いた。

 「配信が行われるなど、ピンク映画の環境に変化が起きており、一般映画と変わらないモラル的な基準が求められるようになった気がします。一昔前ならお正月は痴漢もの、といった定番がありましたが、現在は痴漢や強姦を押し出す作品は少なくなりました。男性側のファンタジーといえども、犯罪を肯定的に捉えるような内容は、戒められるようになってきました」

 昨年のピンク映画26作品で、タイトルに痴漢が入る作品は1作のみ。強姦を連想させるタイトルは皆無。同様に19年は38作品中痴漢は1作品、強姦は皆無だった。

 一方、内容ではジェンダー意識の広がりが顕著だという。特集号でも触れている3作品を挙げ、それぞれに言及した。

 ◆バージン協奏曲 それゆけ純白パンツ!(小栗はるひ監督)

 「女性である小栗監督が登場させた、異性にも同性にも性的に興味がない男性の登場に驚きました。現実の世界でもAVに全く興味がない男性が増えてきていると聞きますが、これまでにないキャラクターです」

 ◆キモハラ課長 ムラムラおっぴろげ(城定秀夫監督)

 「会社で若い女性から気持ち悪がれ、キモいだけでハラスメント、キモハラと嫌われる中年男性が主人公です。笑いやエッチの中に、世のハラスメントに対する男性側の心情が映し出されています」

 ◆たわわなときめき あなたの人生変わるかも(古澤健監督)

 「交際相手の男性に感化された映画監督の女性が登場します。私は当初、感化を受けた男から自立する物語と捉えました。ところが古澤監督と話したところ全く違いました。彼女の感性は彼女自身が育んだもので、女は男に影響されるもの、という思い込みを解き放つ-が監督の考え方でした。そこまで考えているのかと、恐れ入った次第です」

 コンプライアンスの強化、ジェンダー観の広がりの中で、変わらないピンク映画の魅力がある。

 「古澤監督が使っていたのですが“ただの映画”という言葉がしっくり来ます。入れ替えなしで3本立て上映が普通だった昔、映画館で感じたものに近いような気がします。題名を覚えていなくても何かが心に残り続ける、そんな良さが頭に浮かびます」

 ピンク映画も入れ替えなしの3本立て上映。内容はコメディーあり、任侠やファンタジーや文芸的なものに加え、ひたすらエッチさを追求したものもあり、テーマは自由そのものだ。ネット上でより刺激的な映像がはびこる中、根強いファンがいる理由が、少しだけ分かったような気がした。

 同特集号の購読は、東京・阿佐ヶ谷で切通氏が営むネオ書房=TEL03-3339-6378、お店のツイッター(@bu_suko)=まで。(デイリースポーツ・山本鋼平)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

サブカル系最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス