愛之助さんとの素敵な日々を終え……

 「お家芸は、黙阿弥先生の当り狂言のもじり……」

 先月まで上演しておりました『もとの黙阿弥』では、東京、大阪と本当にたくさんのお客様から有り難い評判の声を頂戴いたしました。感謝申し上げます。和やかで優しい座頭の愛之助さんのおかげで、座中一同、家族のような3カ月を過ごせました。愛之助さん、素敵でした。

 貫地谷しほりさんとも仲良くさせていただき、先日も演出の栗山民也先生のお芝居を一緒に観に行って楽しくお食事をしたりして。念願の作品に出演でき、とても思い出深い舞台になりました。

 そして私は、天国から黙阿弥に関われとでも指令を受けているのかもしれない……そんなことを考えてしまいます。「黙阿弥もの(?)」が続くんです。

 次の舞台は初春新派公演、新作『糸桜』。河竹黙阿弥の娘、糸女さんのお話です。皆さん、歴史には教科書では出てこない女性の存在が数多くありますよね。この糸女さんも、まさにその一人。

 歌舞伎作者の河竹黙阿弥は、実に360もの作品を生み出し、『三人吉三』『弁天小僧』『髪結新三』『河内山』など代表作は数知れません。そして今日でも黙阿弥の作品が上演され続けている影には、娘の糸女さんの存在があるのです!

 糸女さんは黙阿弥の作品を正しく残すために七十余年の生涯を懸けました。作者である父の手伝いをしながら、黙阿弥没後には女手ひとつで家を継ぎ、無断上演に目を光らせたり、作品の版権をかけて最高裁まで戦ったりと、かなりパワフルな方だったよう。そんな糸女さんにどこまで迫れるか、いままさに準備をしております!

 『もとの黙阿弥』では黙阿弥作品を一晩でパクッて上演する女を演じたこの私が、『糸桜』では黙阿弥作品の無断なパクリを断じて許さない女になります。偶然にも程がある、見事に正反対の立場のお役!……不思議なご縁を感じます。河竹黙阿弥生誕二百年を記念した作品ですので、なおさら黙阿弥に対して強い運命を感じてしまう今日この頃。

 波乃久里子でございました。

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