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日本でタブー視された映画が本邦初公開

5月17日の上映会では日本人キャストの1人・井浦新が舞台挨拶した
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 今年3月、中国の習近平主席がドイツ・ベルリンで行った講演で、「南京事件」で大量虐殺を行った日本を批判する一方、1人のドイツ人を讃えたことからこの名前が日本でも話題となった。

 ジョン・ラーベ(1882-1950年)。当時、ドイツの多国籍企業シーメンス社の南京支社のトップとして駐在していたが、戦況が一変するや、南京国際安全区委員会の委員長となり、中国人の保護に奔走した人物だ。そのラーベを主人公にした独・仏・中合作映画「ジョン・ラーベ~南京のシンドラー~」(2009年)が市民団体の手によって、ついに日本公開となった。

 同作品は09年のベルリン国際映画祭でプレミア上映されるも、日本の映画配給会社は買い付けに二の足を踏んだようだ。犠牲者数はもちろん、事件そのものの真偽を巡って様々な議論を呼ぶ南京事件について、日本では語ることすらタブー視されている。映画界では「南京1937」(95年)公開時に右翼によってスクリーン切り裂き事件が起こった苦い過去がある。しかし世界では、南京事件70周年を迎えた07年前後に多数の作品が生まれているのだ。

 そこに名乗りを上げたのが、09年から「南京事件をテーマにした映画が、肝心の日本で見られないことはおかしい」と異議を唱え、日本未公開作の上映活動を行っている「南京・史実を守る映画祭」実行委員会。母体は、南京事件の被害者である夏淑琴さんの名誉毀損裁判などを支援していた「南京への道・史実を守る会」のメンバーで、自ら配給・宣伝を行っている。

 日本初披露は、今年5月17日に東京・江戸東京博物館で行われた。2回行われた上映はいずれも満席。さらに雑誌「世界」の編集者・熊谷伸一郎が司会を務めた記念シンポジウムが行われ、中央大学名誉教授で中国近現代史研究者の姫田光義氏と大阪府立大学人間社会学研究科大学院生であり、ラーベの日記をめぐる論文を数多く発表している永田喜嗣氏が出席。フィクションゆえ、当然、映画には真実と異なる場面もあり、挿入されている記録映像の出典元やモデルとなった人物のその後の解説もあり、歴史を検証する有意義な時間だった。

 とりわけ、映画上映前に流された、同作品の脚本・監督のフロリアン・ガレンベルガー監督のメッセージが胸に響いた。「私は日本を批判したいわけではありません。ドイツ人として、ドイツの過去の過ちを振り返れば私たちは誰をも批判する資格がありません。とはいえ、歴史上で何が起きたのか、なぜ起きたのかを知り、責任を受け継ぎオープンに議論することで南京虐殺やホロコーストのようなことが二度と起きないようにしていくことが大切です。日本を批判する意図はありませんが、私は個人的な意見として日本とドイツは歴史的責任や罪に対する姿勢に異なる部分があると考えています。どちらが良いということではなく、過去に向き合うことは現在をより良くしていく上で重要であり、その向き合い方を考え、あくまで現状を改善するために日本ではどうなっているかということですが、日本の歴史や伝統を見る限り、日本の文化の中では過ちや失敗に向き合い、前向きに議論することが難しいように感じています」と。鋭い!と、うなるしかなかった。

 その傾向は、映画界を見るだけでも良く分かる。「ヒトラー~最期の12日間~」(04年)、「善き人のためのソナタ」(06年)、「ヒトラーの贋作」(07年)など、自国の負の歴史と向き合った作品のなんと多いことか。

 実は本作もその1つ。ラーベはナチ党員だったことから帰国後はゲシュタポに逮捕されている。中国勤務が長く、ナチの圧政には加担していなかったことからすぐに解放されたようだが、非ナチ化が許されるまでに時間を要し、貴重な南京事件の資料となるラーベの日記も長らく非公開だった。今やその日記は世界各国で翻訳されているが、出版されたのはラーベの死後の96年。つまり本作は、抹殺してしまった歴史を、今一度掘り起こす作業だったのである。

 確かに日本人にとっては、戦争責任を突きつけられる作品を見るのはつらい作業である。しかし、こうした映画は、海外の人たちが日本をどう見ているのかを知る絶好の機会である。政府は今、外国人観光客の誘致戦略を盛んに行っているが、なんだか上っ面に思えて…。相手国の歴史や心情を理解しないと真のおもてなしはできないぞ!っと思っているのは、筆者だけではないだろう。

 同作品の次回上映は8月23日、東京・文京シビックセンターで。ただしチケット完売。さらなる上映の機会を期待したい。(映画ジャーナリスト・中山治美)

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