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黒澤映画でアカデミー賞寸前ブラシ職人

初代三波伸介が描いた黒澤明監督(三波家提供)
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 「三波さん!『どですかでん』が、ノミネート間違いないようです!」。夕方の三波家の食卓は騒然とした。親父が出演した黒澤明監督作品「どですかでん」。実績ある黒澤監督初のカラー作品と言うこともあり、アカデミー賞外国語映画賞ノミネートは当然というもの。しかしながら、外電の記者からの電話で騒然としたのは「アカデミー賞の選考で日本のコメディアン、シンスケ・ミナミの評価がこの上もなく高く、もしかしたら何がしかの賞が出るかも。」という知らせのせいだった。

 俺が幼稚園の時のことだった。親父は黒澤明監督からの「会いたい。」との電話を受けて、一人赤坂プリンスホテルに向かった。黒澤明の新作にどうか?ということでの「面接」だった。黒澤監督は、プリンスホテル最大の宴会場にテーブルと椅子とコーヒーだけを置き待っていた。てっきりラウンジでの話だと思っていたので面食らった親父は「黒澤先生、なぜ広い宴会場で二人なのですか?」と聞いた。「三波君、これから1時間、私と話をして、この広い空間を埋めてくれ。」親父は一生懸命に話をした。

 しばらくして黒澤監督はにっこり笑い「君は見事にこの空間を埋めてくれた。一緒に仕事をしよう!よろしく!」こうして「どですかでん」に抜てきされた。ブラシ職人役の親父はそれから数カ月、下町のブラシ職人の所に通い、家に帰って来てもブラシを作る日々を過ごした。

 親父曰く、「本当の職人は話をしながらでも、一カ所のブラシの毛の本数がぴったりくるもんだ」と言い、俺と遊びながらでも手元でブラシ作りを続けた。

 「お父さん、ブラシ屋さんになるの?」と聞く俺。「そうだよ。映画の中で本当のブラシ屋さんになるんだ!」見事、映画の役はハマリ、親父の最高の演技だと評価も高い。黒澤映画で喜劇役者としてのスキルアップをして、アカデミー賞でも高い評価。紋付き袴を用意して受賞に備える。

 記者から再び電話だ!「どうやら受賞はないようです」オツカレ!

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