トレエン第2章は“漫才回帰”だぞ 休みなしで駆け抜けたスターな1年間

 2015年、5年ぶりに復活した漫才日本一決定戦「M-1グランプリ」を敗者復活枠から制し、一躍スターダムを駆け上がったトレンディエンジェル。歓喜のVから1年3カ月、そして「M-1王者」の肩書が外れてから3カ月、目まぐるしい日々の中で得たもの、失ったもの、そして再び得ようとしているものは何なのか。斎藤司(38)とたかし(31)が、『今』を語った。

 ◇    ◇

 長い“祭り”は、ようやく終わった。奇跡のM-1王者として過ごした1年間を、斎藤は「本当にもう、こなすだけの毎日というか…」とポツリ。「表面だけ見られるんだ、という感じでしたね。話題性は多かったんですけど、シンプルに『俺、中身あるのかな』って思いました」と自嘲気味に振り返った。

 一方、たかしは「去年はすごい忙しくて、正直イヤだったんですけど、今は一番人生で楽しい。日本で一番幸せなんじゃないかと思います」とあっさりしたもの。斎藤をして「周りにどう思われても気にしないヤツ」と言わしめるたかしならではの思いだ。

 M-1王者として迎えた16年は、斎藤に休日は1日もなかったという。たかしも「2、3日ぐらい」という、想像を絶する多忙。全国を飛び回る中で、自分が今、どこにいるかすら見失った。斎藤は「大宮も沖縄も一緒でした」と笑い、たかしも「実家暮らしなんで、親に『明日○時に起こして』って頼むんですけど、『明日はどこなの?』って聞かれて、わかんないんですよ。とりあえず駅まで行って、あとはどこかに連れて行かれるような感じでした。入り時間と集合場所だけ遅刻しなければいいやと」と話した。

 当然、そのしわ寄せは芸人としての根幹にやって来た。ネタを作る時間は「なかったですね」(斎藤)、「ほとんど作ってないんじゃないですか」(たかし)。斎藤は「僕らは夜中にネタ合わせするんですけど、1時、2時に仕事が終わって、ネタ作りもしてみましたけど、眠気が勝っちゃって…。クオリティーに反映されましたね」と苦笑いした。

 このため、昨年のM-1に出て連覇を狙うという選択肢は選べなかった。たかしは「いいネタがあったら出てましたよ」と話し、斎藤は「ネタがいいのができなかったのもあるし、ビビりもありました。今出ても勝てないと」と正直な気持ちを吐露した。

 決断の背景には、同じく15年に「キングオブコント」を制したコロコロチキチキペッパーズの存在があった。コロチキは連覇を狙い16年のキングオブコントにも出場したが、準決勝で敗退。斎藤は「そういうのを見ると、それはイヤだな…と」と、王者のプライドが邪魔をしたことも明かした。

 誰もがうらやむ「M-1王者」という肩書にも、少なからず潜んでいた負の要素。「M-1チャンピオンというだけで、ネタをやる順番も後ろに下がるじゃないですか。ゴリゴリの若手たちの後にやって、受けないっていう時もありましたしね」と斎藤。さらに「今まではなかった、一挙手一投足が注目されるという感覚。『斎藤寝てない』っていうのがネットニュースになったのを見て、びっくりしましたね」と、世間からの注目も両(もろ)刃の剣となった。

 それまで抱えていた“貯金”だけで突っ走るしかなかった1年。たかしは「今はもう、借金抱えてるんじゃないですか」。

 昨年12月、新たなM-1王者の誕生で、重圧から解放された2人にとって、今年は「第2章」のスタートでもある。だが、斎藤の歯車は、いまだ若干の狂いがあるという。

 斎藤は「自分の中では一応、第2章は始まってるんですけど、納得はいっていない。お笑いが難しくなってるんですよ」。その理由を「変にファッションショーとかドラマとか出始めてから、自分を見失っているというか…」と打ち明けた。

 「漫才師」から「タレント」への変化。たかしは「僕らはもともと、漫才師とも思われてないんじゃないですかね」と笑ったが、斎藤は「みんながそっちに行く理由がわかったというか…。テレビに出て行くと、敵が『芸人』じゃなくて、『芸能人』になるんですよ」と説明。たかしも「最初は、敵は芸人だし、勝負はネタしかなかった。でも去年はそれが変わりましたね」と語った。

 自分たちに変化がなくても、取り巻く環境が変わっていく。斎藤は「例えば、梅沢富美男さんが同じジャンルだと思わないじゃないですか。でも実際は梅沢さんとも戦う。こういうことになるんだ…って感じました」とその感覚を口にした。

 戸惑いの中、同時期にブレークしたタレントたちと情報交換することも多かったという。たかしは、一番インパクトがあった芸能人を「りゅうちぇるですかね」と回答。斎藤も「“戦友”というか、同じ時期にガッと出たんで、ちょこちょことそんな話したり…。にこるん(藤田ニコル)とかもそうですけど、若いんですけど、すごいしっかりしてて、それを聞いたら、自分が甘ったれだなと思いましたね」と笑った。

 酸いも甘いも体験した1年。「リセットした気分ですよね」と現在の心境をあらためて明かした斎藤。その上で「一昨年の俺らの方が面白かったよなと思う時もあります。ハングリー精神がなくなるんですよね」と危機感も告白。たかしは「あと、周りの芸人から応援されないです」と悩みを明かした。

 2人がたどり着いた結論は、やはり「漫才」への回帰だ。斎藤は「活動を劇場にシフトするというのも、やらなきゃいけないなと思う。そこで生まれたネタをタレントとして使うこともできるし」としつつ、「やっぱり原点ですから、そこは浮き足立たないようにしたい」と宣言した。

 M-1王者は、お笑い界の頂点なのか-。あらためてそう尋ねると、斎藤は「ではないですね」と即答。たかしも「あくまで『その日』じゃないですかね。その日一番面白かったというだけ」とサラリと言い切った。

 今年目指すことは「やっぱりネタを作ること。ネタが面白いと自信につながるし…」と斎藤。「最終目標はスーパースターになりたいんで、そこに行けるんなら行きたい。でも、今のままならすぐ落ちるなと思うので…。何でここに来れたのかというと、やっぱりお笑いのおかげなので」と足元を見据える。たかしは「僕はまあ、毎日おいしいお酒が飲めればそれでいい」と笑顔。それぞれの「マイペース」を取り戻し、真の「第2章」へ向けて歩き出す。

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