大村崑 戦後間もない時代のけんか伝説…大河「西郷どん」秘撮影話も

 俳優・大村崑は86歳の今も現役バリバリで活躍する。NHK大河ドラマ「西郷どん」では西郷吉之助(隆盛)の祖父・龍右衛門を演じ、存在感を放った。テレビ黎明(れいめい)期から「とんま天狗」(1959年)などの軽演劇で多大な人気を博し、オロナミンCのCMでは「元気はつらつ!」と笑顔を届けた。幾つになっても“崑ちゃん”と親しまれ、髪はふさふさ、肌もつやつやだ。何でそんなに元気なのか。崑ちゃんの“元気はつらつ”物語をお届けする。第2回はNHK大河「西郷どん」秘話や、神戸のクラブでボーイをしていたころのけんか時代を。

 -NHK大河ドラマ「西郷どん」で西郷隆盛の祖父、龍右衛門の役を演じました。大河史上、最高齢だった。

 撮影は夏の盛りでした。稽古の時、若い人はやぶけたジーンズとか海水浴から帰ってきたような格好だった。松坂慶子さんとかは浴衣を着てはったけど。これは俺が見せなあかんと思ったんで、白のかすりを着て扇子をさしてカンカン帽かぶって下駄をはいて「おはよう」とみんなに声を掛けた。見慣れない格好やったのか驚いてた。あくる日から稽古はみんな、着物になった。西郷どん(鈴木亮平)も黒い浴衣を着て。プロデューサーが「師匠のおかげです。みんなぴしっとなってます」と言ってくれた。

 -撮影を振り返って。

 子供たちが相撲をとっているのを樫の木の上から見守るシーンがあったんです。はしごで上って、竹で組んだところに正座。2時間。痛いのなんのってあなた。高所恐怖症で怖いし。拷問みたいに。でもいいカットが撮れました。龍右衛門の死後も回想でそのシーンが使われた。回想でもギャラ払わなあかんからね。

 -芸能界を目指して高校卒業後に神戸のクラブ「新世紀」に。

 現在の東急ハンズのあたりにあったんです。芸能人が江利チエミさんや雪村いづみさんらが集まる店だったのでなんとかとっかかりをと思ったんです。チップが良くてドア開けるだけで500円くれたり。(※人事院が公表している昭和24年の大卒国家公務員の初任給は4223円)暴力団もいっぱい来た。「おい、これ持っとけ」とハンカチに包まれた物を渡された。見たらピストルや。どないすんねんと。ロッカーに入れといて帰りしなに渡して1000円くれたりとかね。

 -戦後間もない時代。

 今でも忘れません。4400円の会計を逃げた男3人連れがいたんです。逃げられたらそのテーブルを担当してる僕らボーイが弁償せなあかん。僕らは1人で4つくらいテーブルを受け持って客の動きをチェックしてるんです。忙しくなってきてその3人連れは2人になり1人になった。踊ってるふりをしながらその1人もいなくなった。ぞっとしたよ。4400円やもん。必死で追いかけて1人を捕まえた。生田神社の森に連れて行って背広をひじまで下げて動けないようにしてね。バシッ、バシッと。「1人逃げ、2人逃げ、おまえも逃げるてどういうつもりや!」言うてね。交番に連れて行きました。

 -代金は。

 警察が間に入って身分証明書を確認して、現金を持ってくるとか、何か変わりの時計とかを置けとか。●▲の会社(神戸にある東証一部上場企業)のやつをよう捕まえた。

 -高校を卒業してすぐにクラブに?

 その前に貿易会社で働いてました。そこで出会った女性と9年付き合ってふられた。手もつないでない女性で。つらい思い出や…。

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 大村崑(おおむら・こん)(本名 岡村睦治) 喜劇俳優。1931(昭和6)年11月11日、神戸市生まれ。クラブのボーイから司会者、コメディアンに転身。50年代、テレビの黎明期に軽演劇「やりくりアパート」「番頭はんと丁稚どん」「とんま天狗」で全国的スターに。大塚製薬「オロナミンC」のCMで「うれしいとめがねが落ちるんですよ」のコピーがはやる。著書に「崑ちゃん ボクの昭和青春譜」(文藝春秋)など。2017年、旭日小綬章を受章。

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