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坂東新悟

『三人形』で傾城を踊る坂東新悟
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 現代的なスラリとした舞台映えのする容姿ながら、どこか古風で、それでいて凛とした清廉な雰囲気を持つ若手女方の坂東新悟。父・坂東彌十郎譲りの熱心さで、成長著しい。昨年評判を呼んだ歌舞伎NEXT『阿弖流為』の阿毛斗など、新作にも果敢に挑んでいる。今年2月の大阪松竹座では、午前の部の『義経千本桜』の「渡海屋・大物浦」で源義経と舞踊『三人形』で傾城、午後の部では『金閣寺』で将軍足利義輝の母である慶寿院尼を勤める。おっとりとした話し方でシャイな顔を持つ一方、ブログ「坂東新悟のしんごろく」ではエッジの効いた文章と絵を披露している。

   ◇  ◇

 今回、初めて義経のお役を演じさせていただきます。『勧進帳』をはじめ、義経は歌舞伎のいろいろな作品で登場する人物です。女方の役者さんが演じることも多く、私もいつか演じさせていただきたいと思っていたお役なので楽しみにしておりました。実は「渡海屋」に出させていただくことも初めてなので、身が引き締まる思いです。今回の舞台での経験を糧に将来的に義経を何度も勤めることができるよう、自分自身も大きく成長できればと思っています。

 義経を演じるにあたり、梅玉のおじさまに教えていただきました。最初に教わった事は、「今回のお芝居は知盛の悲劇を描いていて、義経の悲劇じゃない。この場では落ちていく義経の憂いや悲しさよりも、武将としての強さだったり、全てをわかっている御大将の格が大事」ということです。特に私は女方ですので、より強さを意識した方がいいと言われました。新しい境地に挑むつもりで勤めさせていただいております。

 昨年1月、浅草公会堂の花形歌舞伎で『土佐絵』を踊らせていただきました。こちらは『三人形』を元にしたもので、まったく同じものではありませんが曲や振りが似ているところがあります。前の幕が重厚な悲劇ですので、『三人形』では華やかに、明るい舞踊劇を楽しんでいただければと思っています。

 午後の部の『金閣寺』で慶寿院尼のお役をいただいたときは、「まさか!」と驚きました。おそらく史上最年少(笑)。花形ならではの配役ですね。先月大阪松竹座でご一緒させていただきました東蔵のおじさまに教えていただきました。このお役は動きもセリフも少ない中で、人物をお見せしなければならない。しゃかりきになるお役ではないので、力の抜き加減が難しいです。

 花形歌舞伎では普段とは違うお役を勉強させていただける。自分たちの世代は人数も多いので、こうした花形歌舞伎だけでなく、普段の興行でも一緒に出演することが多くなります。ライバルであり、同じ舞台を作り上げる仲間でもあり…刺激になりますし、気が抜けません。同世代の中で埋もれないよう、自分自身の色をしっかりと持たないといけないと思っています。

 私は179センチと女方としては高身長なのですが、立役をするには細すぎて、自分が本当にやりたいのはどちらだろうと考え、父やまわりの先輩方のお勧めもあり、女方が多くなりました。でも女方を志したときに、ここまで(身長が)大きくなるとは思っていませんでしたが(笑)。

 亡くなった神谷町のおじさまや(七世中村芝翫)他の先輩方からも「そんなに気にしなくていいよ。小さくならなくていいから」と言っていただきました。身長を活かすというよりは、まずはいかにそのお役の気持ちで芝居をするかですよね。だからなるべく自分からは身長の話はしない。見てくださる方に「新悟って大きいんだ」といった先入観を持っていただきたくはない。自分自身の存在感というよりも、身長を言い訳にすることなく、役の気持ちであったり、女方としてきれいに見せたいなという思いはあります。

 普段は時間があれば文楽なども見に行くようにしています。歌舞伎の演目の元になった作品も多いですし、義太夫の勉強にもなります。同じ場面でも歌舞伎とはやり方が違ったりして、面白いですね。もちろん文楽だけではなく、ジャンルにこだわらず、舞台を見るのは大好きですね。最近は小劇場作品を見ることも多いです。出演者の方々ともお話するようになり、刺激をいただいています。

 父とさせていただいている自主公演「やごの会」で、昨年は欧州公演としてパリ、ジュネーブ、マドリッドなどを巡演させていただきました。日本のお客様とは違った場面で拍手をいただいたり、反応が面白かったです。特に女方というものに興味を持っていただいたようでした。ただ、熱狂的に受け入れていただいた反面、向こうでは私が若手だとかは関係ない。一人の歌舞伎役者、歌舞伎の代表として見られているという緊張感はありました。「やごの会」としての公演はまだ決まっていませんが、父がまた色々な企画を考えていると思いますので、私も楽しみにしています。

   ◇  ◇

 坂東新悟(ばんどう・しんご)1990年12月5日生まれ。坂東彌十郎の長男。屋号は大和屋。95年歌舞伎座『景清』の敦盛嫡子保童丸で初代坂東新悟を名のり初舞台。12年12月南座『佐々木高綱』の高綱娘薄衣ほかで名題昇進。女方として、古典作品から新作歌舞伎まで幅広く演じる他、立役にも積極的に取り組んでいる。

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