【上田まりえ 28】春になると思い出す12年前の東伏見

 今から12年前の春、「野球の勉強がしたい」と思い、鳥取から東京の大学へ進学しました。プロ、社会人、大学、高校など、見てみたいチームがたくさんあった中で、特に憧れていたのが早稲田大学野球部。上本博紀選手(現阪神)、松本啓二朗選手(現DeNA)、須田幸太投手(現DeNA)など、甲子園で活躍していた同い年の選手が入部。また、大好きな和田毅投手(現ソフトバンク)の母校ということもあり、伝統校かつ強豪校のその空気を肌で感じてみたかったんです。

 上京からおよそ20日後の2005年4月21日(木)、青空に薄く白い雲がたなびき、ポカポカと暖かく、そよ風が心地良い日でした。お天気に背中を押され、東伏見にある早稲田大学野球部のグラウンドへと向かいました。切符を改札機に入れることすらおっかなびっくりだったのにもかかわらず、電車の乗り換えの仕方とグラウンドへの地図を印刷した紙を握りしめ、なんとか移動に成功!駅を降りた瞬間に聞こえてきたランニングの掛け声に、胸がドキドキしたことを覚えています。

 グラウンドの隅には観客用の椅子があり、キョロキョロと辺りを見渡しながら腰をかけました。私以外には、何十年来のファンと思(おぼ)しきおじさんが数人いる程度。「あぁ、やっぱり場違いだったかも…」と思ったそのときです。「カーンッ!」という音とともに、目に飛び込んだのは青空に吸い込まれるように弧を描く白球。「木のバットって、こんなに澄んだ音がするんだ…。ボールって、こんなに奇麗に飛ぶんだ…」と、一瞬で心を奪われました。それまでテレビでしか見ることができなかった野球が急にリアルなものになり、体の奥がビリビリとしびれるような感覚がしたのです。今思えば、これが恋に落ちた瞬間。「野球と結婚して、“野球まりえ”になりたい!」という夢の始まりでもありました。

 春になるたびに、この日のことを思い出します。上京してから13回目の春を迎えた今年も、自然と足は神宮球場へ。大学生たちのひたむきなプレーを見ると、大好きな野球とともに夢を追いかけ始めた自分の姿を思い出します。先週末に開幕した、東京六大学野球春季リーグ。今年は何試合、見に行けるかな?選手のみなさんにとって、素晴らしいシーズンになりますように!

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