なぜ本田の解説はなぜ“刺さる”のか?! 理論言語学のプロが分析 近畿大学名誉教授・石井隆之氏
開催中のサッカーW杯北中米大会で、日本代表は30日の決勝トーナメント1回戦で強敵・ブラジルと戦い、1-2で敗れた。大会を通して話題となったのが、元日本代表MF・本田圭佑(40)による生中継の解説。テンポの良いトークと独特のワードセンスで、毎試合終了後にその語録が注目された。現在も選手としてシンガポールのFCジュロンに所属し、解説者としてはほぼ活動していない本田の解説が、なぜこれほど“刺さる”のか。理論言語学の専門家で近畿大学名誉教授の石井隆之氏(69)がデイリースポーツの取材に応じ、その理由を分析した。
石井氏はまず、本田の解説の優れている点として「共感力」と指摘。とりわけ、「視聴者と同じ目線で話をしている」「きれいな関西弁で、親しみやすさを増している」「ストレートにものを言う」「随所にユーモアがにじみ出ている」と、四つの特長を挙げた。
W杯に3大会出場し、世界の舞台で大活躍しているレジェンド級の選手でありながら、決して上から目線になっていないことが印象的だという。視聴者が感じるであろうことを素直に言葉にすることで、分かりやすさに直結している。「ワールドカップは、サッカーが本当に好きで見ている人だけではない。そういう人にも、上から目線ではなく専門用語に頼りすぎない本田さんの解説は分かりやすい。ネット上の反応にも現れている」ともした。
また、関西弁は柔らかい印象を与え、視聴者との距離が近づく。親しみやすさに関しては「選手への『さん』付け。あれも良いですよね。完璧な敬語ではないけど、丁寧で親しみやすさが増す。『君』とか呼び捨てとかにしないのも好感」だと語った。
ストレートかつ短い言葉で言い切るのも“本田節”の真骨頂だ。「ウザい」「エグい」など、端的かつキャッチーな言葉で状況を印象づけつつ、普段の解説では耳にしない言葉が次々飛び出すことで新鮮さが感じられるのも大きい。「サッカーのような局面が常に入れ替わるスポーツは、解説は理論的過ぎない方がいい」とし、視聴者がプレーを見る目線の妨げにもなっていないと指摘した。
ユーモアに関しては、本田の言語化能力が大きく影響している。「チュニジア戦での『左足ぴょん』とか『いけいけドンドン』とか、印象的な言葉がたくさんあります。ワードセンスはすごく高いと思います」と絶賛した。
石井氏はコミュニケーションを分析する際、中国の「五行説」を用いて「木」「火」「土」「金」「水」の5種類に分類する。本田は「土」に分類されるとし、「『木』は論理的なコミュニケーションで、ジャーナリストなどに多い。『火』は感情が全面的に出る」などとした上で「『土』は経験を持った人が親しみやすく語るのが特徴で、『娯楽的コミュニケーション』とも言われる。お笑い芸人もこちらに分類されることが多く、芸人とスポーツ選手のトークは相性がいい」と説明した。
その他の特徴として「派手な言葉は使うけど、きつい言葉は使わない。心の奥底では冷静で、だからこそ視聴者にも受け入れられる」「視聴者の目線、ピッチで戦う選手目線、そして解説者目線と、三つの目線が兼ね備えられている」「俊敏さが語学の能力に関わっているという研究もある。サッカー選手は語学にたけた人が多く、解説でも優秀な人が多い」などと列挙。「今回の解説は、コミュニケーションの取り方の教材になりうるのではないか」とまでたたえた。
