「変な映画」だけど「大事な瞬間がたくさん描かれている…」芋生悠、主演映画「バカンスは始まったばかり」を語る
映画「バカンスは始まったばかり」が6月19日に公開される。主演の芋生悠(28)はNetflixシリーズ『極悪女王』でマキ上田役を好演。NHK連続テレ小説「ばけばけ」、TBSドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」などの話題作にも出演してきた。最新の出演作について「変な映画」と表現しながらも、その魅力を語った。
◆バカンスは始まったばかり
夏の始まり。3年連れ添った春樹(五十嵐諒)と離婚したばかりの優香(芋生悠)は親友の詩菜(新帆ゆき)とその恋人の太宰(足立英)と共に、とある海辺の町へとバカンスに訪れた。そこで、かつて恋仲にあった太宰と久しぶりに再会した優香は徐々に太宰への想いが再燃していく。一方、詩菜は海辺の町で暮らす詩人の天馬(山口雄大)に惹かれていて…。
-作品のみどころは。
「ちょっと変な映画ですよね(笑い)。虚無感というか、乾いた雰囲気があるんですけど、その中にすごく人間の本能的な部分が垣間見える。男女がぶつかり合って、近づいたり離れたりする中で、自分の本当の気持ちが見えてくる。そのバランスが面白い映画だと思っています。普段の生活って、毎日中身が濃い、というわけではないじゃないですか。この映画でも、ずっとなんでもないような時間が流れているんだけど、その中に『自分にとってはすごく大事な瞬間』がたくさん描かれる。私はそこがすごく好きです。なんでもない時間の中に、そういう『自分にとってはすごく大事な瞬間』を見つけることって、実は大事なのかなと。それはバカンスだと、特に見つけやすいのかもしれないですね」
-バカンスだからこそ見つかる。
「そうですね。ただ流れるように生活しているだけだと、気づけない気持ちってあると思うんです。それが、海沿いに行ったりして、いつもと違う時間を過ごすと『あ、自分ってこうだったんだ』と見えてくることがある。優香を演じながら、自分にもそういう時間が本当は必要なのかもしれないなと感じていました。私は決まった時間に仕事をするわけではないですけど、ぎゅうぎゅうの電車に乗っている時に『なんでここにいるんだっけ』とふと思う瞬間とかがあります。そういう時は、視野が狭くなっているのかもしれないな、と。時々ふらっと旅に出て、現地でいろんな人と話をします。相手のことを知るだけじゃなくて、自分のことも少し見えてくる。だから、この映画には共感するところがとても多いです。
-役にどのように入っていったか
「正直、脚本を読んで準備している段階では、役に対してはあまり共感できませんでした。『どうして優香はこんなことをするんだろう』と感じる場面もありました。いろいろ思いをめぐらせながら準備したんですけど、結局最後まで分かりきれない部分があったので、少し不安な状態で撮影に挑みました。その分かりきれない部分は、撮影していく中でなら見つかるのかも。そんな期待も込めて『とりあえず現場に行ってみよう』という感じでした。撮影期間はずっと海辺で、実際に合宿みたいな感じでみんなで泊まり込みで撮影していました。寝るまでずっと海の音を聞きながら寝落ちしたりする中で、心も体も勝手にほぐれていきました」
-心がほぐれたことで変化はあったか。
「ありました。優香として、友達だったり恋人だったり元恋人だったりと話しながら、本当に心がほぐれた状態でお芝居をすることで、他の登場人物と考えを共有しあえる部分がたくさんあって。そうする中で、脚本を読んでいるだけでは理解しきれなかった部分がみえてきた。『そうか、こんな感情になるんだ』という発見が、演じる中でとても多かったです。この主人公は、何かを目的としてバカンスに行っているというよりは、動機づけもあまりないままにふらっと行っている。だから、脚本を読んだだけでは彼女の考え方や思いの『軸』が見えにくいというのもありました。でも、演じていくうちに、主人公の中にある孤独感や寂しさ、今までの人生で抱えてきた鬱屈とした部分が、バカンスを通してほぐれていく瞬間が見えてきた。そこはとても面白いなと感じました」
-この作品を演じきったことで、自分の中に変化はあるか。
「自分の人生の選択を人に委ねない。自分で見つめて、選んでいく大切さを、この映画の中で強く感じました。演じる私自身にも影響を与えた気がします。私は割と思い切りのいいタイプだと思うんですけど、覚悟が足りないのかなって。今の課題は『覚悟』なのかもしれません。思い切りの良さはあっても、どこかで覚悟しきれていない。恥ずかしい思いをしたり、傷ついたり、あるいは誰かを傷つけたり。そういうことを怖がっているのかもしれないと、演じながら感じるところがありました。この映画を通して、そこまで恐れなくてもいいのかもしれないと思うようになりました。思い返してみると、俳優としてだけではなく、ひとりの人間として、何かに怯えている瞬間が多い気がします。きっとそういうものは、役との向き合い方にも表れてしまう。役に対して、真正面からぶつかれないのは良くない。だから、自分の人生にもきちんと向き合っていきたい。今はそう感じています」
-作品のどのような部分から特に強く影響を受けたのか。
「主人公の休暇の過ごし方がすごく好きで。ひとりでかき氷を食べに行ったりとか。些細なことなんですけど、自分が食べたいものを選んだりする時間って必要だな、と思いながら演じていました。あとはダンスコンテストで、いつの間にか本気で踊っちゃうみたいなところも好きでした。トロフィーが取りたいというよりも、『とにかく全力で踊り切りたい』みたいなところに、優香の性格が出ている気がして。途中で子どもみたいに本気で怒っちゃう場面も好きです。大人だからとか、周りに人がいるからとかは関係なく、本気で怒る。そういう風に、一瞬一瞬を一生懸命、恥じらいなく生きているところに影響を受けました」
-この作品は俳優人生においてどういう意味合いを持つのか。
「この作品に関わったことで、俳優という仕事との向き合い方も変わるかも、というのが一つあります。覚悟を持って、思いきり向き合いたいな、と。それと、もっともっといろんな場所に行って勉強がしたいです。変化してるのかしてないのか、進んでは後戻りしているようにも感じ、現在地が分からなくなることもあります。それでも、まだまだ伸びることはできる、という自分に対しての期待も込めて。もっと勉強していけば、今までとは違う姿にもなれるし、違う景色が見れるはず、と信じています。ずっと私を見てくれている人たちに『こんな側面もあったんだ』と感じていただけるように、演じる引き出しをもっと増やしていきたい、と思っています」
