提供した側の責任は!?甘く見るな!『依存症』対策 山本浩之アナコラム
【ヤマヒロのぴかッと金曜日】
「こどもの日」の産経新聞1面の記事には、思わず笑ってしまった。
統合型リゾート施設(IR)開業を見据え、大阪府はギャンブルなどの依存症患者らを支援する「大阪依存症対策センター(仮称)」設立の準備を本格化する。
相談から治療、回復までの支援をワンストップで行い、精神保健福祉士に加え、SNSやAIも活用、連携協定を結ぶ京都大学では依存症に対応できる医師らを養成する、という内容だった。
これまで前例のない取り組みらしい。こうした施設を作ること自体、全く異論は無い。むしろ、国が先頭に立ってやるべき話である。何に笑ったのか。言うまでもなく冒頭の「IR開業を見据え」という点だ。
わざわざギャンブル依存症患者を産み出すカジノを作りながら、一方でその患者を立ち直らせるというのだからこれほど矛盾した話もあるまい。カジノ構想が持ち上がった頃から、私は反対の立場をとってきた。万博や統合型リゾートには夢があるが、カジノは必要ない。どころか「害」でしかない。
ギャンブルやネット・ゲームのような『行為』に依存するタイプ、アルコールや薬物といった『物質』に依存するタイプなど『依存症』にもいろいろ種類があるが、この現代の病いは、厄介なことに一度ハマり込むと容易に抜け出せない。コントロールできずに繰り返してしまう。
自身のギャンブル依存症で生じた巨額の負債を返済するため大谷翔平選手の口座に手をつけた元通訳。大麻や覚醒剤など薬物に何度も手を染めてしまい、その都度マスコミの餌食になった芸能人。知名度や関心が高いほど格好のネタにされてきた。
もちろん、行為自体は100%許されないことだが「なぜ同じことを繰り返してしまうのか。意志の弱い奴だ」と責めるのは間違いだ。「意志の弱さ」ではなく、依存症とは依存性物質や行為がドーパミンを過剰に分泌させ、我慢する能力を破壊してしまう「病気」なのである。
そうした怖さを十分理解している筈なのに、我々の社会は個々の利益を優先してしまう。ごく一部の人間の問題、と矮小化してしまっている。つまり、依存症に陥ってしまう原因は「私たちの社会」にあるのだ。
今年3月、SNS依存をめぐる裁判で、カリフォルニア州地裁の陪審団は、メタとグーグルに責任があるとする評決を下した。20歳の原告女性は幼い頃からインスタグラムやYouTubeなどに依存しうつ病を発症、弁護団は「無限スクロールのような機能が中毒性をもたらせるように設計されている」と主張し、認められた。損害賠償額は9億6000万円だった。
「一日16時間使ったとしても、それは依存症の証拠にはならない。一日の大半をインスタグラムで過ごす10代の若者に問題がある」と主張したインスタグラムのトップの主張は退けられた。当たり前である。
オモチャを与えておいて「使いすぎ」って、それは無いだろう。
繰り返すが『依存症』の原因は社会にある。社会の仕組みにメスを入れられるかどうかが今問われているのだ。それなのに「カジノを作るゾ!そしたら依存症患者が増えそうだ!そうか。じゃあ依存症対策センターも作ろう!」なんて…。笑ってどこが悪い。
◇山本 浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。
