堤幸彦監督「感動して打ちのめされた」映画「国宝」完成度に悔しさと刺激 70歳でも向上心
映画監督の堤幸彦氏(70)がTHE JET BOY BANGERZ(TJBB)主演のABCテレビのドラマ「DARK13 踊るゾンビ学校」(ABCテレビ=日曜深夜0・10、テレビ朝日=土曜深夜2・30)で監督を務め、「ゾンビ」と「ダンス」をかけ合わせた新境地に挑んでいる。古希を迎えた今でも「見たことがないドラマを作りたい」と意欲は高まるばかり。多くのヒット作を世に送り出した名匠に、映像制作へのこだわりや思いを聞いた。
「TRICK」シリーズや「20世紀少年」など映画、ドラマで多くのヒット作を生み出してもなお、高みを目指す気持ちは変わらない。70歳となった現在も絶え間なく映像を撮り続け、複数本の公開予定作も控える。
「年齢は関係ない。やり尽くしたフィールドなんてない。今だって新人のアーティストにビデオクリップを撮ってくださいと言われれば、僕でよければありがたいと思う。映画作品が60本を超えていようが常に0(本)だと思って取り組んでいる」
初心を忘れない姿勢で向上心を持ち、ヒット作を狙い続けている。ただ、「(興行収入や視聴率の)数字は全てではない」とも言う。「観客動員数が伸びるからこのキャスティング、視聴率が安定するのでこの企画というのは違う。あくまで企画、脚本が優先」と譲れない信念も明かした。
昨年は実写映画が好調だった。特に「国宝」が22年ぶりに邦画実写の興行収入歴代1位を更新する200億円を超える大ヒット。長期間をかけた李相日監督の大作で、堤監督は見た瞬間に「打ちのめされた」と認めるしかなかった。
「芸術点も高い。努力のレベルが違いすぎる。感動して打ちのめされたというのが正直なところ」
悔しさをかみしめつつたたえ、「伝統芸能や歌舞伎は再現しようとしてもできるものではないという固定観念を持ってしまっていた。アンタッチャブルなものを見事に造形していた。全てを断ち切って取りかかっても僕には無理だと思った」というほどの衝撃を受けていた。
だからこそ刺激にもなった。「過去にヒットと言われるものがいくつもあるけど、それが未来を保証するわけではない。賞味期限ももう近いかもしれないけど、チャレンジングであり続けたい」。前向きに自らのヒット作を超えていく思いを持ち続けている。
演技がほぼ未経験のTJBBの10人が主演に名を連ねた「DARK13-」も「とても冒険的」と孫ほど離れた年齢のキャストと奮闘している。ドラマの舞台は、現世とあの世のはざまにある廃校の教室のような閉鎖空間で、トラブルを起こし言い争う人間たちが、あの世へ行く前に送りこまれてくる。個性と“特殊能力”を持つ、TJBBが演じる10体のゾンビが最後の学びと裁きを下す。ゾンビ×ダンスが融合したホラーコメディーを生み出した。
演技初経験のメンバーが多いことで「台本は覚えてきて」ということだけを課した。「古くさいことかもしれないけど、きっちりやっていただきました。やっぱりパフォーマンスができる人ってほぼすべからく演技もできる。声の大きさとか技術もヒントを与えればすぐに吸収してできる」。アーティストやアイドルも起用してきたこれまでの経験が生かされた。
15日に最終回を迎える同作は、LDH代表取締役社長のEXILE HIROと話し合う中で生まれた。「ゾンビ、ダンスというライトな感じで入ってみたものの実は人情ドラマという。その意外性も既視感がないものを作れたと思う」。70歳を超えても挑戦への情熱を燃やし続けている。
◇堤幸彦(つつみ・ゆきひこ)1955年11月3日生まれ。愛知県出身。映画監督・演出家。法政大学社会学部社会学科に進学。大学中退後、東放学園専門学校の放送芸術科に入学。95年のドラマ「金田一少年の事件簿」シリーズで注目を集め、「池袋ウエストゲートパーク」、「TRICK」、「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」などヒットを連発。映画でも「20世紀少年」3部作や「BECK」などの監督を務めた。
