ゆりやん監督「当たり前のようにハリウッドの中心にいる人になりたい」 「禍禍女」で映画監督デビュー、海外映画祭で4冠 自身の「恋バナ」から
お笑い芸人・ゆりやんレトリィバァ(35)が、南沙良主演の映画「禍禍女(まがまがおんな)」(6日公開)で監督デビューを果たした。同い年のいとこの影響で映画好きになり、関西大学文学部で映画を専攻した経歴を持つ。初挑戦の監督業に悪戦苦闘しながらも体当たりでディレクションし、自身の恋愛経験を投影した意欲作を完成させた。公開を前に海外映画祭で4冠を達成し、世界にその名を知らしめている。夢のハリウッドスターに一歩近づき、さらなる野望を掲げた。
憧れの肩書を手に入れて「ゆりやん監督」と呼ばれると、口角がクイッと上がった。
小学生の時に出会った「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がきっかけで映画にのめり込み、大学で映画研究に打ち込んだゆりやんは「まさか自分が映画監督になるとは」と驚く。昨年9月に米ハリウッドで初監督作のワールドプレミアが行われ、鮮烈デビューを飾ったことに「夢のハリウッドのド真ん中でワールドプレミアをして、冷静に考えたら、とんでもないこと」と、言葉に感激と恐縮が入り交じる。
21年にテレビ番組で「映画監督をやりたい」と夢を公言し、今作の企画が始動。原作のないオリジナル作品を作るべく、プロデューサーと会話を重ねる中で「熱中して話せたのが恋バナだった」という。過去の恋愛体験を伝えたところ、プロデューサーに「それホラーです」とツッコまれ、自身の経験を投影した作品を作ることに。好きになられたら終わりという「禍禍女」を題材とし、南演じる「好き」という感情をこじらせて暴走する主人公が繰り広げる、異色の“恋愛ホラー”が誕生した。
劇中で光る南の狂気じみた演技は、ゆりやんのディレクションのたまものだ。「普通ではない女の子」を投影する上で、まずは自ら実演。細かなニュアンスを伝え、二人三脚で“ヤバい女”を創造した。映画作りを通して「楽しかった。監督業が何か知らずに始めたけど、映画作りは膨大な作業の積み重ねだなと思った。皆のアイデアを重ねていくと、こんな世界も見えるのかという感動も味わった。自分が研ぎ澄まされ、何者なのかを知る良い機会になった」と新境地を感じている。
自身の恋愛観が形成されたのは、小学生の時に鑑賞したドラマ「おそるべしっっ!!! 音無可憐さん」だった。ぶりっ子が男性を追いかけ、うっとうしく思われながらも最終的に結ばれる物語だ。小1のゆりやんは「好きって言い続けたら付き合ってくれるやん」とすり込まれたといい、「そのスタイルで30年やらせていただいています」とお辞儀。恋愛における勝率を「人から見たら0勝なのかも」と総括し、「恋愛といっても片思いだけで、恋。恋愛は一般的に二人で成立するんですけど」と遠い目をした。
片思いの歴史をたどると、大人になってからの禍々しいエピソードも飛び出た。「付き合っていない好きな人に『ウエディングチャレンジ』と題した動画を毎日送っていた。『今から丸めたティッシュをゴミ箱にいれます!入ったら結婚です!』と言って。入るか、入らへんところをスローで編集して『チャレンジならず』とか言って。悲しいところが絶対に成功しなさそうなことをする。そんなんやっちゃってました」。その恋の行方を尋ねると、「ん~ほっとけ!」と吐き捨てた。
今作はゆりやんにとって復讐劇だ。「今まで振り向いてくれなかった人に後悔させたい」という一心で作ったが、完成した作品を見て「こんなことしていたら、振り向いてくれんよな」と反省。過去の禍々しい自分は「成仏された」といい、今後の恋では「好きというだけで突っ走らず、相手の都合を考えたい」と生まれ変わることを誓う。
洋画をきっかけに米国に憧れを抱き、24年に活動拠点をロサンゼルスに移した。自己紹介をする際に監督もしていることを話すと、現地の人々が「むっちゃ食いついてくれるからラッキー」と笑顔。アメリカンドリームを狙っており、「名前を見ただけで作品が見たくなる監督になりたい。当たり前のようにハリウッドの中心にいる人になりたい」と意欲。芸人として数々の賞を獲得してきただけに、映画賞にも貪欲で「賞レース、大好き~」とらしく答えた。
芸人、俳優、歌手、映画監督に続き、次に狙う肩書は「選手」で「空手でメダルを取りたい」と野望を掲げた。空手の経験は「1回もない」というが、「これからやりたい。諦めることなんて一つもない」と至って真面目な表情だ。「次の次くらいにオリンピック種目に復活してほしい。その時は(取材)お願いします」。記者が「その時は“ゆりやん選手”とお呼びしますね」と返すと、目の奥が燃えた。ゆりやんの挑戦はまだ続く。
◆ゆりやんレトリィバァ 1990年11月1日生まれ、奈良県出身。関西大学文学部卒。11年4月に吉本養成所NSCに35期生として入学し、後に首席卒業。17年の「女芸人No.1決定戦 THE W」や21年の「R-1グランプリ」で優勝。俳優としては、24年配信のNetflixドラマ「極悪女王」でダンプ松本役を演じ、第8回アジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワードで最優秀主演女優賞を受賞した。24年から米ロサンゼルスに拠点を移し、ハリウッドスターを目指している。
