大の阪神ファン・高市氏の横顔 23年日本一では号泣&お気に入りは新庄剛志氏 デイリースポーツ記者が見た素顔
自民党総裁選は4日、党本部で投開票され、高市早苗前経済安全保障担当相(64)が第29代総裁に選出された。1回目の投票で過半数に達した候補者はなく、上位2人による決選投票の結果、高市氏が小泉進次郎農相(44)を破った。2021年、24年に続いて3度目の挑戦で悲願達成。15日召集を軸に調整が進む臨時国会で、第104代首相に指名される公算が大きい。女性の首相就任は史上初めて。大のプロ野球・阪神タイガースファンとしても知られ、旧知のデイリースポーツ記者が高市氏の素顔を明かした。
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2023年9月14日、21時16分。私のスマホが音を立てた。
「おめでとうございます。18年ぶりの『アレ』やで!」
送り主は見ずとも分かった。
自民党の高市早苗次期総裁(64)である。
高市氏と知り合ったのは1991年だった。取材で訪れた、神戸市内での催しでのことだ。閉会後にすれ違ったので、名刺を差し出した。すると受取人の声は、ものの見事に裏返った。
「エッ?スポーツ新聞?ひょっとして、タイガースも取材してはったん?」
あのときの笑顔は、34年たっても忘れられない。
若き日の早苗少女を魅了したのは、往年の助っ人たちだった。長距離砲のハル・ブリーデンに、全力プレーのマイク・ラインバック。奈良県内の自宅には、ランディ・バースの直筆サインも飾られた。
後年のお気に入りは、現日本ハム監督の新庄剛志だ。「彼と一緒に道頓堀を歩いて、カニすきの店に行けたらなあ」。初恋の人を語るような口調に、こちらも顔が赤くなった。
1999年に、東京・永田町の執務室で取材する機会があった。目を疑った。ここは大阪・梅田の阪神百貨店か?甲子園のタイガースショップか?トラッキーやラッキーのぬいぐるみ、さらにはサイン色紙など、猛虎グッズが所狭しと並んでいる。球団のカレンダーは壁に2本掛け、その月と翌月の公務日程を把握していた。
岡田彰布監督に率いられ、愛するタイガースは2023年、セ・リーグの「アレ」を成し遂げた。高市氏が音頭を取って、有志が集まり「内閣府猛虎会」の祝勝会を開いた。大阪市福島区出身の原宏彰内閣府審議官(当時)らが参加し、美酒に酔いしれた。
そして日本シリーズ第7戦、11月5日。大阪府内で講演をこなした後、気もそぞろに帰京した高市氏はテレビにかじりついた。無事に日本一を見届け、思わず号泣。国会きっての政策通が、喜びを爆発させた瞬間だった。
内閣府猛虎会は、今度は日本一祝勝会を開いた。国家の中枢を担う精鋭が続々と名乗りを上げ、参加者は6人に増えた。大阪から取り寄せた優勝紙面を酒の肴に、猛虎談義に花が咲いた。
高市氏は今回の総裁選で、当選という「アレ」を手にした。日本初の女性首相が、もうすぐ誕生する。とはいえ阪神が果たした歓喜のゴールと違い、こちらは課題山積の試合開始である。慎重かつ大胆なゲーム運びが求められる。
ところで阪神ファンの総理大臣は、誰以来だろう。ひょっとしてこちらも、憲政史上初だろうか。長年プロ野球のデータ記事を書いてきた私だが、そんな資料が手元にないのが残念だ。(デイリースポーツ・高野 勲)
