スーパー戦隊50周年 愛され続ける理由 「ゴレンジャー」から半世紀、レジェンドPが語った3つのポイント
スーパー戦隊シリーズが50周年を迎えた。1975年スタートの「秘密戦隊ゴレンジャー」から半世紀。時代を超えて愛される理由は、どこにあるのか。映画「仮面ライダーガヴ&ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー Wヒーロー夏映画2025」(25日公開)を目前に控え、東映のレジェンドプロデューサーでキャラクター戦略部の白倉伸一郎氏(59)を直撃。モチーフ、6人目の戦士、色分け…。長寿シリーズへと変身した3つのポイントと、この先の未来を紐解いてもらった。
数々のスーパー戦隊作品をプロデュースしてきたレジェンドは一言目からぶっちゃけた。
「言葉は悪いけど、なんでスーパー戦隊が長く続くシリーズになったのかは歴史的にいうと結果論なんです。『ゴレンジャー』が始まったのも事故。誰もこういう番組を作ろうとはしていなかった。だから、基本的には惰性だと思っているんですよね」
時は1975年4月。「仮面ライダー」シリーズの放送局が変更され、新番組が必要となった。過去にお蔵入りとなっていた「5人のライダーが登場する」企画に目を付け、新たなヒーロー番組「秘密戦隊ゴレンジャー」が誕生。緊急措置的な立ち上げだったが、大ヒットした。
「誰も計算していないところから立ち上がって、理屈に合わないことがいっぱいある。緻密じゃないんですよね。人の頭で考えたものじゃなくて、なぜかそうなってしまった。それが逆に魅力な気がします」
人気の秘密を紐解くと、3つのポイントが見えてきた。「今に至るフォーマット」を確立した作品として挙げたのは「恐竜戦隊ジュウレンジャー」(92年)。「改革の1つは『モチーフが明確になった』こと」と説明する。
「それまでは、例えば『超新星フラッシュマン』とか『地球戦隊ファイブマン』とか、何を言っているんだか分からない。地球戦隊って地球なんだからそりゃそうだろ!ファイブマンって5人なんだから決まってるだろ!みたいな。モチーフが曖昧だったのが、恐竜や忍者と極めて明確にしていく流れになりました」
もう1つは「追加戦士」の本格参戦。「いわゆる6人目の戦士が出てきて、バカ当たりするんです。ロボットフォーメーションも変わった。1号ロボに追加戦士が連れてきた2号が合体する、みたいなフォーマットが確立されました」。「6人目」に対して、当時のプロデューサーは猛反対したという。
「スーパー戦隊の伝統に反していることと偶数はダメだという主張。西遊記は4人だよなぁとか思うけど、そういうものなんだ、と。『七人の侍』とか、日本人は奇数を好みますよね。最後は(6人を)並び立てないってことで実現しました。今は平気で割り込んできますけどね」
分かりやすい「色分け」も大きな要素で、時代に合わせて変化を続けている。多様性が重んじられる現代。「ゴジュウジャー」では、初の女性ブラックが登場した。レッドを女性が演じる設定も、企画会議で「1回は必ず出る」という。
「どうしても赤は熱血、青はクールみたいなイメージがありますけど、必ずしもそれが正解とは限らない。ある種のスーパー戦隊が作った文化。実は本来の色が持つイメージとは合致していないんじゃないかってことは繰り返し繰り返し考えています」
毎年、新たな作品が誕生するため、数年先まで企画が進んでいるのかと思いきや「よくも悪くも自転車操業」と苦笑する。長らく新作を放送しながら翌年の企画開発を並行してきたが、2023年にキャラクター戦略部を新設。以前より先行きを透明化しつつ、撮影の投資先にも計画性を持たせ「よりやりがいのある現場にしている最中」という。
突然変異的に生まれたスーパー戦隊は歴史の中で変革を繰り返し、現在の「ゴジュウジャー」で50周年。歴代レッドが登場するお祭り作品となっている。「過去の設定を上書きするような感じ」で、歴代レッドに特徴を付与しているのも新機軸。半世紀の区切りを経て、スーパー戦隊はその先へとどのように進むのか。
「ゴジュウジャーは、過去の戦士たちを再定義していくことも含めて、スーパー戦隊の歴史をもう一度語る番組だと思います。だから、51作目がその延長線上にあってはならない。番組そのものが次のステージに行かないといけないと思いながら…絶賛構築中です!」
「あまりハードルを上げすぎるといけないなぁ」と笑いながら、新たなフェーズを模索していた。
◆白倉伸一郎(しらくら・しんいちろう)1965年8月3日生まれ。東京都出身。1990年、東映入社。「スーパー戦隊」「仮面ライダー」の両シリーズでチーフプロデューサーを数多く担当。近年では「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」「機界戦隊ゼンカイジャー」「仮面ライダージオウ」など。東映東京撮影所長、東映テレビ・プロダクション社長、キャラクター戦略部部長などを歴任した。
