芸能界の子育て世代に、育児のアレコレを聞く企画「ママって○○」「パパって○○」に、タレント・つるの剛士（４８）が登場。２度の育児休業経験を持ち、５人の子どものパパでもあるつるのは、幼稚園の教員免許や保育士の資格も保持。まさにパパタレ界の“アイコン”と呼ぶにふさわしい存在だが、父親となった際や、育児休業の当初は「できなかったことだらけ」と振り返る。そんな出発点から何を感じ、どう過ごしてきたのか。豊富な経験を持つ、つるのの子育て論に迫る。

　“つるのは一日にして成らず”－。子育てや男性の育児参加をテーマとした講演会を行うと、質問コーナーではおなじみの質問が飛ぶ。「つるのさんのようなイクメンを探すには、どうしたら良いのでしょうか」。答えは決まっている。「そんなヤツはいません！いきなりイクメンになる人、子どもができたから今日からパパだぜっていう人なんていないんです！」

　現在は５人のパパ。時にＳＮＳで家族に作ったお弁当をアップするなど、多忙の中でも家事に育児にと奮闘しているが「（育児の）失敗談って言うとみなさんと一緒。（最初は）できなかったことだらけ」と話す。夫人が第１子の里帰り出産から帰ってきた当日には、頼まれたおむつ替えのやり方が分からずもめた。自身は３人の妹を持つ４人きょうだいの長男。小さな子供の面倒を見ることに苦手意識はなかったはずだが、子育ての出発点は暗中模索だった。

　大きな転機は２０１０年の育児休業。当時は「夫婦仲が不穏になったり。家の中の空気が明らかに悪かった」。仕事では一日中ロケや収録をこなし、家で仮眠を取ったら再び現場へ。一方の家庭は、３人の子どもを抱えながら郊外に引っ越した直後だった。「（夫婦で）ケンカもしましたし、ある時はファブリーズが飛んできたりも。ハハハ」と笑って振り返るが「一度家庭の基盤を作り直してから仕事に行こう」とタレント業を休むことを心に決めた。

　ただ、現在とは違い男性の育児休業について世間での理解がそれほど進んでいない時代。生き馬の目を抜く芸能界で生きるタレントが取ることは現実的ではなかった。そこで夫人が第４子を妊娠中の０９年６月、つるのは「ベスト・ファーザー　イエローリボン賞」授賞式の壇上で“ゲリラ的”に育休を宣言。驚いた事務所との折衝の末、翌年１月から最初の育休に入った。

　家庭を助けたいという一心で入った育児休業は「個人的に家庭に入るために休むのは、申し訳ないっていう気分が大きかった」という。芸能界を離れる不安もないと言ったら嘘になる。だが、その後「男性育休」、「イクメン」という言葉が世間で広がり、復帰後には逆に注目も浴びた。６年後に第５子が生まれた際の２度目の育児休業では、ノートを片手に日々の気付きや自らの感情を記し、ＳＮＳにもアップしていった。

　育休を終える日にアップした所感をまとめた動画には、多くの子育て当事者から共感が届いた。「僕は『育休』という言葉が嫌い。全然休みでもないし、なんなら仕事よりも大変。仕事は目標を達成して、評価もされる。でもママたちは誰からも褒められることなく、当たり前のように時間がやってきて、誰からも評価されずとも毎日やっている。それが理解できるだけでも相当違う。だから、僕は育休というより『男の家庭訓練』かな」と込めた思いを語った。

　そんなつるのが、５人の育てを通じて感じたことは「子どもたちは“社会からの預かり物”」ということ。中学卒業後に単身でカナダの高校へ進学した長男を皮切りに、次女もカナダの学校で学んでいる。さらに今年は長女がマレーシアでの学校生活を始めるといい、枠にとらわれず、ノビノビとやりたいことに突き進む子供たちを「本当にすごいなと。心から尊敬しています」と話す。

　「心配より信頼」をモットーに、５人の子どもと向き合ってきた。そして育児に悩む子育て世代には「この子たちをどう社会へ戻してあげようと考えれば、まあ肩の力が抜けるというか。子どもは自然と一緒で、思った通りにはならないから、気楽にいってほしい。思った通りにならないからこそ面白いんです」とメッセージを送った。

　企画タイトル「パパって○○」には「子どものおかげでパパになる」と記した。あらためてその心を問うと、実感を込めてうなずいた。「これに尽きます。いきなりパパにはなれない。子どもが居ないときの僕はすごく未熟だった。だから、すべて子どものおかげなんです」。

　◆つるの剛士（つるの・たけし）１９７５年５月２６日生まれ。福岡県出身。９７年に「ウルトラマンダイナ」で主人公のアスカ・シン役を務め、その後「クイズ！ヘキサゴン２」でブレーク。番組内ユニット「羞恥心」でも人気を集めた。０３年に結婚し、現在は２男３女の父。２２年３月に短大を卒業し、幼稚園教諭二種免許を取得。同年、保育士試験にも合格。幼児心理学を学ぶために大学に在学中。趣味は、将棋（３段）、釣り、波乗り、キャンプ、バイク。