【渡邉寧久の演芸沼へようこそ】三遊亭兼好25周年の現在地
「飽きっぽい性格なのに、よく続いた。珍しい。そのうえ、まだ飽きていないですしね」
落語家生活25周年を迎えた三遊亭兼好(53)は、落語の奥深さをそう語る。
「あんまり欲がない。目標を立ててそこに向かっていく闘争心はなくて、サラリーマンには向かない。流されていくのが好きなんでしょうね、落語というもののちょうどよく流してもらった」と、性格と一致した日日是落語の暮らしに感謝する。
28歳、落語家としては遅い入門。3歳と0歳の子どもがいたにもかかわらず、夫の決断を許した妻。自身も5人の弟子を育てる立場になった今、「同じような(条件の)弟子入り志願が来たら、断りますよ。よく弟子に取ってくれたと思いますよ」と、師匠・三遊亭好楽の受け入れに感謝する。
「私の最大の功績は、うちの師匠を選んだことです」ときっぱり。「好楽の弟子」ということは、「大企業の名刺を持って歩いているような感じ」とたとえる。
前座時分から「笑点」メンバーが出演する地方興行に連れて行ってもらうことが多く、人気落語家がどう観客を喜ばせるのかを目の当たりにした。1000人規模の会場でしゃべることで度胸もついた。
師匠のお供についていたとき、五街道雲助(人間国宝)に初めて会ったことがあった。「こいつに『ざるや』を教えてやってくれる?」と好楽が頼む。
「うちの師匠に言われたら、雲助師匠も断れないようで、けいこの約束をしてくれました」。好楽=大企業の名刺は、水戸黄門の印籠でもあったのだ。
四半世紀に蓄えた兼好落語の現在地を、芸歴25周年記念公演「まるっと兼好」で示す。
東京は、大井町のきゅりあん大ホール(10月25日。ゲスト柳家喬太郎。以下同)と銀座ブロッサム(11月27日、立川志らく)の2公演。故郷・会津の御蔵入交流館(10月29日、春風亭昇太)でも錦を飾る。
「落語家の場合は25周年なんてざら。80周年とかありますからね。でも、節目ですから、何かやっておかないと、というのがあります」と肩ひじ張ったものではなく、演目「三枚起請」「竹の水仙」「質屋蔵」も「私がコンスタントにやっている落語はこんなのですよという代表的な噺です」
普段の兼好を見せる。(演芸評論家)
渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう)新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクなどを経て独立。文化庁芸術祭・芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。
