歌舞伎俳優市川猿之助容疑者（４７）が２７日、都内の自宅で母親の自殺を手助けした自殺ほう助容疑で警視庁捜査１課に逮捕されたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が事件の背景や今後の展開などについて見解を語った。

　猿之助容疑者の父親で歌舞伎俳優の市川段四郎（本名・喜熨斗弘之）さん（７６）と母親喜熨斗延子さん（７５）が５月１８日に自宅で倒れているのが見つかり、死亡した。

　その日から今回の逮捕まで約４０日という時間を要した理由について、小川氏は「猿之助容疑者が入院していたことが理由の１つとして挙げられます。心身両面の体調を配慮し、逮捕して留置に耐えられるか否かを医師の判断を待っていた。今回、留置に耐えられるということで検察庁と協議し２６日に逮捕状の請求したわけです。実は２週間ほど前に１度逮捕か…と、一時、動いた時があったのですが、その際は医師から承諾が得られなかったということもあったようです」と明かした。

　猿之助容疑者の逮捕容疑は５月１７日午後から１８日午前の間に、自宅で睡眠導入剤を服用させ、延子さんの自殺を手助けした疑い。警視庁によると、「両親が自殺する手助けをしたことに間違いない。私も両親の後を追って自殺するつもりでいた」と供述し、容疑を認めている。捜査関係者によると、同容疑者は一家心中を図ろうとした疑いがあり、警視庁は「逃亡や証拠隠滅の恐れ」を踏まえて逮捕が必要と判断した。

　この「逃亡の恐れ」について、小川氏は「そういう兆しが見えたのか、どこかに行きたいという言動があったのかもしれません。自ら命を絶つための“逃亡先”という可能性も考えられます」と推測。留置場での生活について、同氏は「猿之助容疑者には２４時間の『対面監視体制』が取られます。『対面監視』とは、留置場では独居房に入れられて、目の前に椅子を持っていって、警察官がフルタイムで監視するということです」と“不測の事態”に備えていくことを付け加えた。

　今後、父親の死亡に関与した疑いでも調べられる。小川氏は「今回、両親に対する自殺ほう助で逮捕せずに、あえて母親のみへの容疑で逮捕したことは、父については新たな可能性も視野に入れて調べていくのではないか」と指摘。その上で、同容疑者が調べに対して「両親にビニール袋をかぶせた」「薬のごみは捨てた」と話していることに注目した。

　小川氏は「私的には、このビニール袋が１つの肝になるのではと思っています。睡眠導入剤を服用した後、何故ビニール袋をかぶせる必要があったのか。服用した睡眠導入剤の量は致死量に至る量なのか、その知識はどこで得たのか。死に至らない状態でビニール袋をかぶせた可能性も否めない」と指摘した。

　さらに、同氏は「睡眠導入剤の空シート、ビニール袋ともに既に処分している。処分するということは、人に見られたくないという意識があったのだろうが、見方によっては証拠隠滅とも言える。（警察は）ゴミ収集所等も捜索したと思いますが、発見したという話は聞いておりません。また、『なかった』とされる、ご両親の遺書は本当になかったのか。誰かが処分した可能性はないのか。さらに、父親である段四郎さんの判断能力がどこまであったのかなども」と焦点を列挙した。

　今後の捜査について、小川氏は「押収されたスマートフォンの検索履歴などを調べていると思います。実際に猿之助容疑者が過去にどのくらい薬を処方されていたのかを病院から、父親が通院していた病院の医師からは、父親の判断能力等、慎重に捜査、取り調べは進められていくと思います」と補足した。