歌舞伎俳優・市川猿之助（４７）が１８日に都内の自宅で倒れているのが見つかり、父で歌舞伎俳優の市川段四郎さん（享年７６）、母・喜熨斗延子さん（同７５）が死亡した件について、死因が向精神薬中毒の疑いであることが１９日、分かった。捜査関係者によると、一家心中を図った疑いがあるという。病院に搬送された猿之助は、同日に退院した。また、主演を務める「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」（東京・明治座）の昼の部で市川團子（１９）が、夜の部で中村隼人（２９）が猿之助の代役を務めることが発表された。

　歌舞伎界を揺るがす衝撃的な事件が、新展開を迎えた。捜査関係者によると、一命を取り留めた猿之助と、亡くなった両親の３人が一家心中を図った疑いが浮上。警視庁は今後、退院した猿之助から詳しく事情を聴くなどして、経緯を調べる方針だという。

　司法解剖の結果、両親の死因は向精神薬中毒の疑いと判明した。向精神薬とは、睡眠導入剤などの総称で、厚生労働省によると、主に脳の中枢神経系に作用し、その薬理作用が思考・感情・意欲などの精神機能にある薬剤。薬理作用に応じて、抗精神病薬（主に幻覚・妄想の治療）、抗うつ薬、気分安定（調整）薬、睡眠薬（または睡眠導入剤）などに分けて使われている。

　両親に外傷や注射痕はなく、発見された１８日か前日に死亡したとみられる。母親は発見時に体の硬直が始まっていたことも明らかになった。警視庁は２人が口から睡眠導入剤のようなものを大量に摂取したとみている。また、３人を見つけ１１９番した猿之助のマネジャーは、猿之助が搬送の前日まで「変わった様子はなかった」と話しているという。

　この日は現場検証も行われた。猿之助の自宅前には、１９日午前９時前から手袋に長靴姿の捜査員らが集まり、次々と現場に入った。検証は夕方に及んだが、関連する薬物や容器は見つからず。複数台のスマートフォンなどを押収。午後５時前には段ボール６箱が捜査車両に運び込まれた。

　猿之助が書いたとみられる遺書のような書き置きは複数あり、一つはスケッチ用キャンバスで、近くに別のものもあったという。猿之助を巡っては、雑誌「女性セブン」（小学館）が性加害やハラスメント疑惑を報じていた。

　◆厚労省のホームページで紹介している主な電話相談窓口は次の通り。

　▽いのちの電話

　（０５７０）７８３５５６（午前１０時～午後１０時）

　（０１２０）７８３５５６（午後４～９時、毎月１０日は午前８時～翌日午前８時）

　▽こころの健康相談統一ダイヤル

　（０５７０）０６４５５６（対応の曜日・時間は自治体により異なる）