【渡邉寧久の演芸沼へようこそ】フクロテナガザルなど持ちネタ80~100種類、五代目江戸家猫八21日襲名

 「寄席にはなくてはならない色物(芸人)のいい名前」(落語協会・柳亭市馬会長)がこの春、復活する。

 五代目江戸家猫八(45)。明治元年(1868年)生まれの曾祖父(初代)の時代から、ウグイスの鳴き声をお家芸として継承してきた。

 32歳のとき、父で四代目猫八(2016年3月21日66歳で没)に入門し寄席芸人の世界へ。

「2011年に二代目江戸家小猫を襲名し、干支が一回りしました。猫八の名前を背負うには早いと思われるかもしれませんが、早い段階で背負うことでこの名前を自分のものにしていけるのではないかと、決断しました」と襲名への思いを伝える。

 今月21日(先代の命日)、東京・上野鈴本演芸場で大初日を迎える襲名披露興行。50日間かけ、都内の寄席をまわる。色物芸人が落語家に代わり主任(トリ)を務めるのは、紙切り・林家正楽(75)、三味線漫談家・立花家橘之助(62)に続き3人目。正楽、橘之助が口上に並ぶ日もある。

 「市馬会長に『何かやりたいことがあったら言ってごらん』と言われまして、『口上に色物の先生に並んでもらえたら』とお願いしたら理事会の了解を取っていただけました。落語協会では初めてのことです」。演芸史に残る口上が実現する。

 寄席での出番はいつも、落語家にはさまれる形。「雑談をすると他の師匠のマクラとつく(=似る)こともあるので普段は入れませんが、披露目ではお後に師匠がおりませんから、半分は動物ものまね、半分は雑談で自分の積み上げてきたものを出したいと思います」とプランを明かす。

 ウグイス以外にも「フクロテナガザルやヌーなど80~100種類。タスマニアデビルやヒマラヤタールなどマニアックなものもあります」という持ちネタの数。「動物園で例えるなら私が園長で、誰もが知っている動物たち、寄席ではめったにかけない動物たちの調子を見て、その日のネタのスタメンを組む感じです。私の披露目ですが、動物たちにとっても晴れの披露目です」と江戸家の芸を支える動物たちにも寄り添う。

 普段は立ち姿で芸を披露するが「2と8が付く日は和装で、座りの高座をやらせていただきます。その際に着る黒紋付は祖父(三代目)の形見です」

 歴代猫八に見守られ、五代目が羽ばたく。(演芸評論家)

 ◆渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう)新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクなどを経て独立。文化庁芸術祭・芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

芸能最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス