松本零士さん死去 漫画が“悪書”の扱いだった時代に「好き」一念でペン走らせてきた【評伝】

 松本零士氏
 松本零士さんの色紙=福岡・大刀洗平和記念館
2枚

 「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」などの大ヒット作を生み出してきた漫画家の松本零士(まつもと・れいじ、本名晟=あきら)さんが13日午前11時0分、急性心不全のため都内の病院で亡くなったことが20日、わかった。東映などが発表した。85歳、福岡県出身。葬儀は近親者で執り行った。喪主は妻で漫画家の牧美也子(まき・みやこ)さん。後日、お別れの会を開催する予定。    

  ◇  ◇

 松本零士さんは、世界に誇る日本のコミックの隆盛をつくった一人だ。「クールジャパンのコンテンツ」などと言われるはるか以前、漫画が“悪書”の扱いだった時代に「好きだ」という一念でペンを走らせてきた。

 話し好きで興に乗ると、来客側が多忙の松本さんを心配するほど話が終わらない。きっと生まれながらの語り部だったのだと思う。

 松本さんは10代の頃、手塚治虫さんの漫画に衝撃を受け、福岡県の小倉駅から片道切符を手に東京行きの汽車に乗った。「銀河鉄道-」は星野鉄郎が永遠に滅びない機械の体を手に入れるため、謎の美女メーテルと旅立つ。松本作品では、さっそうとしたヒーロー、クールな悪役も特徴的だったが、鉄郎のような、少しさえない三枚目のキャラクターこそ実に魅力的だった。おそらくご本人の分身だった。

 また、どんなに難しいテーマでも読者の共感を呼んだのは、親しみやすいキャラクターに自分の思いを乗せたことが大きかったのではないだろうか。

 松本作品にはよくラーメンが登場する。上京して好物の博多うどんが食べられなくなり、代わりに見つけた青春の味が、鶏がらしょうゆ味のラーメンだったという。

 死を意識する年齢になって「これまで描いた全作品のラストを考えることが増えた」と話していた。頭の中で、全作品が一つの大きなドラマとしてつながっていた。「結末は決めている」と言いながら、まとめるのは「当分先の話」と言って、詳細は明らかにしなかった。

 そのラストが松本流の語り口でどう仕上がるのか。わくわくしたが、宣言は果たされなかった。

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