【中村竜太郎のタイガー&ドラゴン】厳かな英国、政治問題の日本 2つの国葬を想う

 「コロナになってから首相在職中に自宅で過ごすことはありましたが、妻と一緒にNetflixなどを見たりしますね」

 安倍晋三元首相に筆者がインタビューした際にプライベートの過ごし方を訊ねるとこう明かした。時々ドラマを見るというので、いま一番何が好きかと質問すると、笑顔でこう説明してくれた。

 「『ザ・クラウン』というドラマですね。見られたことあります?これは面白いですね。シーズン4に入るとサッチャー(英・元首相)やダイアナ妃も登場し、緊張した人間関係などが描かれていて、非常によく出来ている。ボリス・ジョンソン(英・前首相)と話したとき、その話題になって、彼もよく『ザ・クラウン』を見ていると。『あの話は本当なのか』と訊ねたら『あれは本当だよ』と教えてくれました(笑)」

 『ザ・クラウン』はイギリス王室を題材に史実に基づいて作られたNetflixのオリジナルドラマで、制作費を100億円以上かけた大作。王室の恋愛事情やスキャンダル、政界との駆け引きなど生々しいエピソードが散りばめられている。クラウンとは王冠の意で、物語の中心となるのは先日崩御されたエリザベス女王。女王としての治世、女性(妻・母)としての苦悩、「開かれた王室」へと改革を進める姿など、国にすべてを捧げ懸命に生きる女王の生き様が克明に描かれている。 

 19日女王の国葬はロンドンのウエストミンスター寺院で執り行われ、日本から天皇皇后両陛下も参列された。厳かなその模様はNHKでも中継、献花や別れを惜しむ国民の様子なども伝えられ、女王がいかに多くの人から愛されていたかがよくわかった。

 世界が注目した女王の国葬の一方で、同時期日本では、来週火曜に行われる安倍元首相の国葬が政治的問題となっている。岸田内閣が国会での議論を経ることなく国葬を実施することが反発を招いたのだが、いまや反対派にとって「国葬に欠席する」ことを表明することが政治的アピールのようになっている。亡くなった人に弔意を表すことよりも、尖った主張が前面に出ているように映るのだが、女王のあの葬儀を見てしまうと、複雑な気分になる。なんだかこの国はおかしいぞ、やはりそう思ってしまうのだ。

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