渡邉寧久 山田洋次監督公認!!玉川太福“寅さん”全作浪曲化

 【渡邉寧久の演芸沼へようこそ】

 “寅さん浪曲”に取り組む若き浪曲師がいる。放送作家などを経て、27歳で二代目・玉川福太郎に入門した玉川太福(42)だ。

 文化庁芸術祭新人賞(2017年)、浅草芸能大賞新人賞(20年)を受賞するなど評価は高く、「できすぎぐらいと思うほど」と振り返る。

 6月9日、東京・国立演芸場で「芸歴15周年記念独演会 夏」を開催する。演目のひとつは「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」。ゲストの山田洋次監督(90)の前で披露する。

 「テレビ番組で、4分ぐらいのダイジェスト版の浪曲を監督に聞いてもらったことはありますが、フルで唸るのは初めてですね」

 先輩浪曲師・玉川桃太郎が生前、「男はつらいよ」第1作を浪曲として持ちネタにしていた。「それを引き継いでやるとき、黙ってやるのは嫌だなと思って山田監督に『上演許可願い』と赤字で表書きした手紙を差し上げました。ひと月ぐらいして、秘書の方から『どうぞやってください』とはがきが届きました」

 嬉々として挑んだ公演。その成功に気をよくした太福は「私自身の手で、全作品を浪曲化してもよろしいでしょうか」と再び。「どうぞ」と返事。松竹や脚本家・朝間義隆さんの許諾も得て、寅さんシリーズ50作の全浪曲化計画に挑んでいる。

 これまで20本を手掛けた。「ネタ下ろしで年4作。全作コンプリートできるのは8年後ですね」と先は長い。

 寅さんと浪曲の親和性は高く、「寅さんで描かれているのは、恋と家族の絆。義理と人情の関係性ですし、恋も失恋という切ない思いになるので、唸りやすく、唸りたい場面にあふれている」。2時間弱の作品を30~40分に凝縮する作業に、放送作家として培ったスキルをつぎ込む。「再現シーンを、頭に焼き付くぐらい見ますが、何度見ても楽しいんです」

 登場人物の特徴のとらえ方もうまく、「声まねはできないのですが、トーンやニュアンス、雰囲気などを浪曲の節を覚える感覚でやっています。前田吟さんが演じる(諏訪)博をやると、会場がいつもざわつきます」としてやったりの表情を見せる。

 「寅さんシリーズは国民の共有財産。事前に本編をご覧いただけると、こんな風に縮めているのかと二重にお楽しみいただけます。それが理想的ですね」(演芸評論家)

 ◆渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう)新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクなどを経て独立。文化庁芸術祭・芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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