サックス奏者・小林香織 15周年盤でレジェンドと共演(インタビュー後編)

 サックス奏者の小林香織(39)が15周年イヤー最終月だった今年2月、記念アルバム「NOW and FOREVER」をリリースした。「過去を振り返るだけではなくて未来にも目が向いている。NOW and FOREVERという言葉がしっくり、ぴったりはまっている」というアニバーサリー・アルバムと、「時間の重みを考えるとグッときます」という15年の歩みについて聞くインタビュー、その後編。

  ◇  ◇

 本作は全て新録だが、全13曲中5~10曲目はライブでの人気曲を新たに解釈したセルフカバーで「すごく意味のある、15年の重みを感じてもらえるもの」になっている。

 「デビューから現在に至るまでの作品を大人になった私が今の感覚で演奏してみたということで、アレンジなどもいろいろ変えて。

 例えば、この時はこのキーが一番いいと思っていたけれども、このキーの方がもっとこの曲の魅力が出るんじゃないか、とか。当時はアルトサックスを演奏することで精いっぱいだったけど、演奏できる楽器も増えて、テナーサックス、ソプラノサックスで演奏してみようという曲だったり。あとはアコースティックですね。

 この1枚で歩んできた軌跡と今後のビジョンをお伝えできたかな」

 小林の新たな面として、アコースティックなサウンドにアレンジし直されたのが、8曲目「Shooting Star」と9曲目「Black Sapphire」だ。

 「例えばいつもエレキギターで弾いているのをアコースティックギターにしてもらう。あまりエレクトリックなサウンドではなく、音圧がちょっと下がる感じ、音数が少ない感じで作った2曲。(後者は)原曲ではもっとエレクトリックな感じなので、印象がだいぶ違うと思います」

 5、6曲目「Seaside Memories」と「Solar」は伝説のグループ「鈴木茂&ハックルバック」との共演という、シティポップ好きには見逃せない楽曲になっている。ここ1~2年ライブで共演を重ねており、「Seaside-」はそこで演奏されてきた。「Solar」はデビューアルバムのタイトル曲だ。

 「あまりにも素晴らしく作ってくださって、私もすっかり味をしめて、レコーディングをさせていただきたいと。せっかくですのでもう1曲、『Solar』という大事な曲をお願いできたらということで、夢がかなう形になりました」

 鈴木とは「5~6年前にフュージョンフェスティバルがありまして、ご一緒させていただいたのがきっかけで」知り合い、シティポップの伝説的シンガー、小坂忠のライブに参加すると鈴木がギターだったりと、共演が増えていった。

 洋楽のカバー盤「MELODY」ではエリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘブン」を鈴木がプロデュースしており、今回の共演も「すごく自然な流れ」で実現。

 「無理にアレンジしたりするのではなくて、ものすごく自然だった。音のストーリーの作り方といいますか、すごくサウンドが温かい。温かいサウンドって、温かく作ろうと思って作れるものではない。経験値だったり、築き上げてきたテクニックだったり、テクニックじゃない想像力とか、Solarという言葉から考えてくださるすごくしっかりした世界観で曲を作ってくださるので、すごく色が濃い。素晴らしい個性がぶつかり合ってという印象です」

 小林はこれまで鈴木や小坂、松任谷由実、杉真理、尾崎亜美、Char、日野皓正、泉谷しげる、タケカワユキヒデ、故村上“ポンタ”秀一さん、リー・リトナーといった、上の世代のビッグネームと共演してきた。レジェンドたちからは「いつも刺激をもらいます」という。

 「皆さんブレないものをお持ちというか、どんな時でも金太郎アメのように、ユーミンはどこを切ってもユーミンだし、忠さんはどこを切っても忠さんだし、泉谷しげるさんもいつ会っても泉谷さんだし、いつもその人でいる。私も将来、ヒップホップのアルバムをリリースしても、演歌のアルバムをリリースしても、ラテンのアルバムをリリースしても、小林香織のフィルターを通して自分らしいアルバムを作っていきたいな」

 今年10月20日で不惑を迎える小林は「年齢を重ねていってからの方がいろいろ楽しい。若い頃は分からないことが多すぎて、悩んだりとか迷ってることに時間を取られていてもったいない。今の方が気持ちの切り替えも早くなりましたし、充実しているように思う」と感じている。

 そんな40代は「培ってきたことを有効に使っていきたいし、次の世代にも今まで時間をかけてゲットしたことをお裾分けというか、プレゼントとかできたらちょっとステキだな」と、人のためにも費やしたいという。既に母校である洗足学園音楽大学ジャズコースの講師として、後進の育成に尽力している。

 自身は高校時代から大学の4年間を通じてボブ・ザング氏に師事。「演奏に迷った時は師匠だったらどう演奏されるだろうかと思います。師匠はかなりジャズで私の音楽とはだいぶ違うけど、教わったことを継承しているつもりです」と、与えられた影響は大きい。「次の世代にもそのバトンを渡していきたい。なるべくノーと言わないで、自由にできる発想を大切にできるプレイヤーを育てたい」と、自身の経験を後輩たちに授けていくつもりでいる。(終わり)

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 ◆小林香織(こばやし・かおり)1981年10月20日生まれ、神奈川県出身。東京育ち。サックス&フルート奏者、作編曲家、プロデューサー。中1でフルート、高2でアルトサックスを始める。2000年、洗足学園音楽大学ジャズコース入学。ボブ・ザング氏に師事。05年、アルバム「Solar」でメジャーデビュー。これまで台湾、中国、タイ、韓国、シンガポール、香港などでアルバムを発売。インドネシアのフェスでは現地紙の1面を飾る。16年のアルバム「MELODY」でさかなクンと共演。

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