ロックバンド「ＬＵＮＡ　ＳＥＡ」のギタリスト・ＩＮＯＲＡＮが、５０歳の誕生日を迎えた翌日の９月３０日に約１年２カ月ぶり、１３枚目のソロアルバム「Ｌｉｂｅｒｔｉｎｅ　Ｄｒｅａｍｓ」をリリースした。新型コロナウイルスの影響でＬＵＮＡ　ＳＥＡのツアーが中断を余儀なくされ、ステイホーム中に制作。コロナ禍がなければ「なかったかもしれない」本作について聞いた。

　ＬＵＮＡ　ＳＥＡは昨年３０周年を迎え、１０ｔｈアルバム「ＣＲＯＳＳ」を引っ提げて今年２月からツアーを行うはずが、新型コロナの影響で、２都市４公演を行っただけで延期された。今年どうするかは「ＬＵＮＡ　ＳＥＡを突っ走ってみて考えよう」と思っていたＩＮＯＲＡＮも、宙に浮いてしまった。

　世間が自粛モードになり、緊急事態宣言も出る中で、「止まっているのが嫌」だったＩＮＯＲＡＮは「曲を作ろう」と、本作の制作を開始。「ノーマルな感じ」ではできず、「自分のスタジオで一から」始めた。

　タイトルのＬｉｂｅｒｔｉｎｅとは放とう者、道楽者といった意味。「なんかちょっと面倒がかかるみたいな。この自分が生きてる時代とかけてっていうか、夢を見ることに対して、乗り越えなきゃいけないものもあるしとか、そういうこと」と説明する。

　歌詞は「コロナ禍の中で、１人の主人公が何を思い何に悩み、何に憧れてとか、そういう抽象的な感じ」をメールで伝えて発注。ＩＮＯＲＡＮのソロは本作も含めて英詞が多いが、「基本は作ったメロディーが、日本語が合うか英語が合うか」で決めるといい、「自分のアイデンティティーがあれば、可能な限り聴いてもらいたい」という思いもある。

　本作には王道のロックナンバーからラップ的なもの、終盤の壮大な「Ｓｈａｋｉｎｇ　Ｔｒｅｅｓ」までさまざまな曲調が飛び出す楽しさがある。

　ＩＮＯＲＡＮは「コロナ禍の中で、何を割り切れなくて、何に希望を持ってって、すごい毎日がごちゃ混ぜだったんで。だから本当に（曲調も）ごちゃ混ぜですよ。何で何に対して何のコンセプトで作るとかいうのもなかったくらいなんで。ゴールを決めないマラソンなのか何か、そういう走ることだったな」と、多彩な楽曲が生まれた制作を振り返る。

　コロナ禍の現状がコンセプトになったとも見えるが、ＩＮＯＲＡＮも「音楽人としてそれが一番リアルなんじゃないかと思って。どんなに世の中が暗くなろうと、混乱しようと、音楽は必要だと思うし、希望の一つだと思うし、その部分がブレなければ良かった」と肯定。「思いもしないようなトラブルも、ハプニングも、偶然も重なってできたアルバムだし、すごい満足はしていますね」と自信をのぞかせた。

　人類に降りかかった今回の試練について、ＩＮＯＲＡＮは「東日本大震災もそうだし今回のもそうだし、音楽に携わっている人もホントに考えたと思う。本気な人は本気ですよね。この時に曲を作るし届けることをするし。音楽人もふるいにかけられるんじゃないですか。苦しくても、好きなら、生き延びていくためには考えなきゃいけないと思う」と考えている。音楽人としてできることは「世の中に対して、貢献というか、使命感を持って」音楽を、希望を届けることだという。

　「色んなことが起こりすぎて、先が読めないっていうことは十分感じてる」が、希望は持ち続けている。

　「曲は作り続けてるし、またすぐ出したいし、ライブも進化をしていかなきゃならないので、色んなことを試したい。希望を与えたいとか、音楽は必要なものだということを皆が思ってくれて、それで少しでもいい方向に変わればいいなって思いますね。人間は進化していくものだし、音楽業界も音楽人も、もちろんみんなも、色んな生活の中で進化していく。だから全然希望がないわけじゃないし、希望の方が多い」

　激動の年に５０歳の節目を迎えたが、年齢は「全然気にならない」という。「まだまだ見たい景色もあるし、学びたいというか、知らない世界を知りたいし。その欲の方が強い」とどん欲に、ＩＮＯＲＡＮは進化していく。

　◇ＩＮＯＲＡＮ（いのらん）１９８９年、ＲＹＵＩＣＨＩ、ＳＵＧＩＺＯ、Ｊ、真矢と、ＬＵＮＡＣＹとしてライブ活動を開始。９０年、ＬＵＮＡ　ＳＥＡに表記を変更。９２年、メジャーデビュー。ミリオンを連発し、東京ドーム公演を行うなど確固たる地位を築く。ソロ活動は９７年開始。ＤＪ　ＫＲＵＳＨや英ロックバンド・フィーダーのＴＡＫＡ　ＨＩＲＯＳＥらとのコラボ、ガンズ＆ローゼズ香港公演のオープニングアクトなど、内外で幅広く活躍している。