ボードゲーム業界の今 コア層だけじゃない!イベント2日で2万5000人来場

 「ボードゲーム」と言われると、どのようなものを思い出されるだろうか。ルーレットをまわしたり、さいころをふったりしてコマを進めるすごろく…というのはもう古い。手軽で、電気いらずで、無限の広がりを見せるボードゲーム業界の今を、数々のボードゲームを取り扱う株式会社アークライトの片岡大輔さんに話を聞いた。

 アークライトは、“ボードゲーム業界のコミケ”と位置づけられる「ゲームマーケット」の主催企業。個人レベルからメーカーまでさまざまな出展者がゲームを持ち寄って販売するイベントで、現在は春と秋の年に2回、それぞれ2日ずつ東京ではビッグサイトで行われる。今春開催回では2日合計で2万5000人を動員した。これは10年前の09年5月に台東館で開催した際の1350人(1日だけの開催)と比べると約18・5倍にもなる(動員数はアークライト発表)。

 片岡さんは「人が直接会って、会話の中で遊んでいくというところがまた見直されているんだろうなと」と支持される理由を分析している。1980年代に日本でもテレビゲームが普及し、その後、携帯型ゲームを持ち寄ってみんながプレーするのが当たり前になった。今は多くのプレーヤーがネット上で協力プレーするMMORPGと呼ばれるジャンルや、世界中のプレーヤーがサバイバルゲームを行うスタイルのものも人気だ。その中で、「1周回って、今の若い子たちはデジタルゲームで遊ぶことが普通になっていて、強烈な刺激を感じなくなったのかなと。一方で、ボードゲーム、アナログゲームで遊んだ経験がないので、むしろ人と顔をつきあわせて遊ぶのが非常に刺激的だったんじゃないか」と片岡さんは感じている。

 その証拠に、ゲームマーケットの客層にも変化が見えてきたという。以前は“マニア層”が多かったというが、最近はカップル、さらには家族連れが多く訪れるようになったのだとか。さらに“プロ”と言える買い付け業者も国内のみならず欧米や中国、韓国、台湾などから姿を見せるようになったという。

 ボードゲームは売る側から見たメリットもある。カード状の備品だけでも成立するため、テレビゲームのようなプログラミングの言語知識や、大規模な開発設備は不要。アイデア一つをきっかけに「思いついて形にして、印刷に出して、上がってきたらそれがすでに製品として売れる」(片岡さん)と、誰でも販売者になれる。

 最近ではテレビ番組発で人気に火が付くケースもあり、7月に日本テレビ系「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」でダウンタウンら出演者が遊んだ「ザ・マインド」というゲームは、放送翌日から日本での販売権を持つアークライトに注文が殺到したという。また人気YouTuberが取り上げると、売れ線商品になるというルートもある。

 また人気漫画・アニメがボードゲーム化されるというのも比較的一般的な流れだ。メジャー作品から、知る人ぞ知る作品まで数知れず。この夏に発売されたものだと、「ゾンビランドサガ~君の心にナイスゲームSAGA~」(スロウトイ)というゲームは、ファンが自分のアイデアを形にし正式に商品化までたどりついた例で、ゾンビとしてよみがえった少女たちが佐賀県のご当地アイドルとして活躍するアニメ「ゾンビランドサガ」のボードゲーム版。友達や家族で遊ぶだけではなく、1人で遊ぶことを想定したルールも用意されている。

 そんな中、アークライトは今秋から一つの勝負に出る。その名も「カイジュウ・オン・ジ・アース」。今年の秋、来年の春、来年の秋と半年ごとに、シリーズものの作品を発表する、というもので、片岡さんも「多分、世界でも初めてという試み」と自信を見せる。上杉真人氏、金子裕司氏、林尚志氏という3人のゲームデザイナーが、同じ世界観の中で異なるゲームを生み出す予定で、片岡さんは「ボードゲームを軸にして版権ビジネスを育てていきたい」と人気アニメをボードゲーム化するのとは逆の流れ、ボードゲーム発のマルチメディア展開を目指している。

 テレビゲームやスマホゲームとは違う独自の色で歩んでいるボードゲーム業界。片岡さんは「カイジュウ・オン・ジ・アース」シリーズについて、「海外にも売っていきたい」と意欲的に語っていた。

 (C)2019 Arclight,lnc. / Drosselmeyer & Co.Ltd.

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