【京マチ子さん悼む】ヴィヴィアン・リーから受けた女優としての刺激

 映画「羅生門」や「雨月物語」に出演し、国際的スターとして活躍した女優の京マチ子(きょう・まちこ、本名矢野元子=やの・もとこ)さんが12日午後0時18分、心不全のため東京都内の病院で死去した。95歳。大阪市出身。14日、親交のあったテレビプロデューサーの石井ふく子氏(92)ら友人が立ち会い、密葬が執り行われた。石井氏によると、京さんが自ら手配したハワイの墓に眠るという。

  ◇  ◇

 映画記者として大映を担当していた頃、看板女優の京マチ子さんを何度も取材した。

 大映の東京撮影所で、京さんと二代目中村雁治郎さんが共演した、市川崑監督の「鍵」(1959年)を取材した時のこと。雁治郎さんが京さんを抱いてお風呂に連れていくシーンがあったのだが、本番撮影中、京さんの胸を隠していたものがポロリとはだけた。

 だが、日本を代表する大女優は泰然自若としていた。「あら?」というくらいのもので、実に堂々としておられた。撮影が許されるのはリハーサルだけで、本番では撮れなかったため、このハプニングは私も含めて現場にいた人たちの目にだけ焼き付けられている。

 それから数年後、京さんはニューヨークに旅立たれた。ブロードウェイに行かれた際、「風と共に去りぬ」などで知られる女優ヴィヴィアン・リーがオーディションを受けている現場に遭遇し、刺激を受けたという。

 帰国した羽田空港で京さんを囲んだ。「あんな大女優になっても、オーディションを受けるものなのね」。実感を込めた言葉が今も記憶に残っている。

 40代に差し掛かり、映画女優として過渡期にあった京さんにとって「自分も頑張らなければ」という気持ちにさせられる出来事だったようだ。「あのヴィヴィアンが新しいことで力を試そうとしている姿から学んだ」という趣旨のことを囲み取材で語られていた。

 その後も何十年と現役で活躍された背景には、女優としての将来を模索していた時期に、力を与えるきっかけを作ったニューヨーク体験があった。そう、私は思っている。(デイリースポーツOB・島久夫氏)

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