難波弘之、センス・オブ・ワンダーを語る(前)目から鱗が落ちるバンドを

 日本のロック/ポップス界を代表するキーボード奏者で、日本のプログレッシブ・ロックの第一人者でもある難波弘之(64)のバンド「センス・オブ・ワンダー」(以下SOW)のツアーが11日に仙台で始まった。

 約40年に及ぶ盟友である山下達郎をはじめ、竹内まりや、故大滝詠一さんら多くのアーティストの膨大なライブやレコーディングへの参加、ソロや野獣王国、ヌーヴォ・イミグラート、A.P.J.などのバンドやユニットといった幅広い音楽活動の中でも「ライフワーク」と位置づけるSOWについて、神戸市のデイリースポーツを訪れた難波が語った。今回はその前編をお送りする。

  ◇  ◇

 難波はSFファンとしても知られ、SF作家としての著作もある。SOWとはSFの精神を表す言葉である。

 -SOWって、SFから来ているわけですよね。

 難波「そうです。SOWって『目から鱗(うろこ)が落ちる』っていう感じで、じゃあ目から鱗が落ちるようなバンドをやろうってところで。よく『レイチェル・カーソンですよね』って言われるんですけど、SFの方なんです(※)」

 -ソロデビューアルバムのタイトルがSOWでした。

 「その時はバンドがなかったんですよ。だから小原礼とかポンタ(村上秀一)とか北島健二とか鳴瀬喜博とか織田哲郎とか色んな人が参加してて。そうる透(SOWの初代&現ドラマー)は参加してたか。ベースがいなかったんですね。ベースを80年に見つけまして。レコード出したけど、バンドがないとライブができないものですから。達郎のエアー・レーベルができて、誘われまして、エアーから出さない?ってことでSOWを組みまして。田辺モット(SOWの初代ベーシスト)が最初のメンバー。以来、(結成が)81年だから…」

 -今年で38年目ですね。かなりの長寿バンドです。

 「ただ、半年に1回か1年に1回くらいしかライブやらないもんですから。昔はわりとよくライブやってたんですけど」

 -さまざまな名義の活動の中で、SOWの位置づけは。

 「ちょっとライフワークな感じですよね。僕の音楽をやるホームグラウンドのバンドっていうことで。それぞれ個性的なバンドが…野獣王国(難波、是方博邦、東原力哉、鳴瀬喜博)とかExhiVision(難波、和田アキラ、永井敏己、長谷川浩二)とかA.P.J.(水野正敏、山木秀夫→池長一美)とかヌーヴォ・イミグラート(難波、五十嵐久勝)とかいろいろあるんですけど、それはみんなそこのバンドの音楽をやる感じ。書き分ける感じですね、曲を。SOWは自分のバンドなんで、自分のやりたいことを思い切りやる位置づけですね」

 -ソロ名義の作品でも「演奏 SOW」「編曲 難波弘之&SOW」といったクレジットが見られます。

 「ちょっと曖昧だったんですよね、その辺がね。僕の音楽をやるバンドとして(SOWを)作って、ギターレスのトリオっていうのをやりたい感じだったんですね」

 -SOWのロールモデルはありましたか。

 「EL&P(エマーソン、レイク&パーマー)の後、UKとかね、EL&Pよりモダンなビートの音楽を、80年代を指向した感じのバンドが出てきたっていうことで、もちろんキース・エマーソン(EL&Pのキーボード奏者)はリスペクトはしてるんですけど、形態としては当時の今っぽい音楽も採り入れた音楽をやりたかった」

 -日本でプログレをやるのは、当時も今も難しいですよね。

 「他の参加アーティスト、例えば佐久間正英とか森雪之丞とか、外部からのサジェスチョンがすごく役立ちましたね。すごくありがたかったです。僕は打ち込みをやらなかったんで、打ち込みでやりたい曲は佐久間正英とやったりとか。作詞能力もそんなにないと思ってるんで、森雪之丞とアルバム1枚『N氏の天球儀』(86年)っていうのを作ってたりとか。こんなアルバム作りたいんだって一緒にディスカッションして作るみたいな。メンバー以外の助けもすごくありましたね」

   (中編に続く)

 ※カーソンは環境破壊を訴えた著書「沈黙の春」で知られる米国の生物学者。他の著書に「センス・オブ・ワンダー」など。

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