26年大注目ルーキーは18歳 伊藤愛華が旋風起こす プロテスト首位合格「普通の高校生活があったからこそ」
今年からJLPGAツアーを予選から決勝まで独占配信したU-NEXTと、デイリースポーツが注目選手を取り上げる連載「推し活応援宣言」。第8回は、現役高校生でプロテストに合格した伊藤愛華(18)=埼玉栄=を紹介する。プロテスト首位合格、最終予選会でツアー序盤の出場権も獲得し将来性は十分。自ら考え、選び続けてきた18歳の現在地に迫る。
12月12日、JLPGA新人戦・加賀電子カップ最終日。伊藤は「77」をたたき、5打差の2位に終わった。初日から首位を守っていただけに悔やまれる内容だったが、本人は涙を見せなかった。「この経験を、今後同じように優勝争いをする時に生かしたい」。視線はすでに「レギュラーツアーでの優勝」に向いている。
現役の高校生。だが11月にはプロテストで、首位での合格を果たした。国内女子ツアー最終予選会でも16位に入り、すでに来季序盤戦の出場権を得ている。ルーキーきっての注目株。しかし、いわゆる「エリート路線」を歩んできたわけではなかった。全国大会での優勝経験などもなく、高校も全日制の埼玉栄高を選んだ。
昨今のジュニアゴルフ界では、練習時間を確保するために通信制の高校を選ぶ有力選手も多い。「でも自分としてはやっぱり、普通の学生生活も送りたかったんです」。文化祭、体育祭、修学旅行…。高校生活を通して、友達と一緒に笑ったり、喜び合ったりしてきた。
2年生の時には、スキー合宿にも参加した。「ケガをしたら競技に支障が出る」という懸念の声もあったが、本人はスノーボードを楽しんだ。
「ゴルフのコーチからは、せめて両手がかばえるスキーにできなかったのか、とあきれられましたが…でも、今しかできないことだと思ったので。思い付きではなく、よくよく考えた上での結論です」
果敢なチャレンジ精神は生来のものだ。おでこには今も残るたんこぶが2つ。ひとつは小学生のころ、一輪車で鉄棒をくぐろうとして失敗して強打した際にできた。だが、高校生活をやりきる中で、少しずつプロに向けた意識が醸成された。
高校3年生の春先の試合中に、足をごく軽くくじいたことがあった。軽症でよかったと周囲は胸をなでおろしたが、本人は重く受け止めた。「これがプロテスト直前に起きてしまっていたら…」。スノボで斜面をアグレッシブに攻めた様子がうそのように、校舎の階段を上り下りするのにも慎重になった。
「やっぱり、自分で感じて、自分で考えて、自分で決めたいんですよね」
学校行事については、変わらず可能な限り出席してきた。JLPGA新人戦・加賀電子カップの期間に本番が重なるダンス発表会についても、登校するたびにクラスメートの練習に立ち会った。BGMを流したり、動きをチェックするための動画を撮影したりと、サポート役としてできる限りのことをしてきた。
ツアー最終予選会の直後、期末テストのために登校した。日程を振り替えての実施で、ひとりきりで問題に向き合ったが、昼食のために学食に行くとみんなが祝福してくれた。
「本当にいい思い出ばかりでした。人によって感じ方も考え方も違うと思うので、これが正解だとはまったく思わないですが、個人的には普通の高校生活があったからこそ、フレッシュにゴルフに取り組めたと思っています」
言葉のひとつひとつに、やりたいことを自分で考え、チャレンジしてきたからこその明確な「意志」が宿っている。250ヤードを超えるドライバー飛距離と明晰(めいせき)なプレーマネジメントで、2026年の国内女子ツアーに旋風を巻き起こす。
【伊藤愛華(いとう・あいか)アラカルト】
◆活発で向こう見ずな女の子
2007年9月26日、東京都練馬区生まれ。幼少時から活発で男の子と遊ぶことが多かった。一輪車で鉄棒に激突したほかにも、雲梯(うんてい)の支柱をすり抜けようとしておでこを強打したたんこぶも今に残る。
◆“天才少女”とはほど遠く…
父の影響で4歳からゴルフを始める。週1回のレッスンを受けるがあまり上達せず、小学4年生を迎えたころに一度やめようとしたことも。
◆中学時代から徐々に台頭
中学時代は陸上部にも所属し、800メートルを専門にしていた。中2からゴルフに専念し、日本ジュニア選手権の女子12歳~14歳の部で10位に。
◆気分転換はとても大事
趣味はカラオケ。ポルノグラフィティの「サウダージ」(2000年リリース)を歌う。冬の時季にイルミネーションを見に行くのも好き。




