河本結 ゴルフを通じて伝えたい「すごさ」「ポジティブさ」カメラには必ず笑顔 裏で地道な調整
今年からJLPGAツアーを予選から決勝まで独占配信しているU-NEXTとデイリースポーツが、注目の選手を取り上げる連載「推し活応援宣言」の第4回は、北海道meijiカップで今季初優勝、ツアー通算3勝目を挙げた河本結(26)=RICOH=が登場。実力、人気を兼ね備え、ファンを魅了する黄金世代は、これからもツアーを盛り上げる。
7月18日、明治安田レディース第1ラウンド。16番パー5で、河本が膝から崩れ落ちた。第3打のアプローチが、カップをかすめて外れた。悔しさ余ってか、グリーン横のラフに倒れこむ。ライブ配信を見たファンからは「(しぐさが)かわいい」「おちゃめ」といったコメントが多数寄せられ、話題をさらった。
ラウンド後、河本はX(旧ツイッター)に「盛り上げてこう!とゴルフしてたら楽しみすぎた、ごめんなさい」と投稿した。この大会は開幕前日にコースにクマが現れたことで、急きょ無観客で行われることになっていた。ファン不在で静かな会場を盛り上げようと、第1ラウンドから奮闘していたのだ。
「選手同士でも声援を送り合って、雰囲気を盛り上げていました。応援してもらって気持ちが高まるというのは、やっぱりあるんですよね。ファンの皆さんのありがたみを、あらためて感じました」
ラウンド中、中継カメラを見つけるたび、そこに向かって必ず笑顔で手を振る。周囲もこの姿に感化され、いまやほとんどの選手がカメラに手を振るようになった。大会全体が明るい雰囲気で映るようになり、国内女子ツアーはさらなる人気を得た。
「昔は目の前の一打に集中して、真剣な表情を崩さないのが美しい姿だと考えていました。でも、いろいろ考える機会があって、今はゴルフを通じてもっとポジティブさを伝えたいと思うようになりました」
もちろん、愛嬌(あいきょう)を振りまくだけでは伝わらない。「説得力や余裕が必要」と語気を強める。今季ここまで、3位以内に入ったのは全選手中最多の7回。1ラウンドあたりの平均ストロークでも1位に立つ。
「特に平均ストロークにはこだわっています。いつ見てもすごい、いつもゴルフが面白い、と思わせたいんですよね。それこそがプロなのかなと」
海外メジャーでも活躍している。5月の全米女子オープンでは初日7位発進し、第3ラウンドでも全体2位の「70」をマークした。7月のAIG全英女子オープンでも活躍が期待されたが、直前の国内女子ツアーで熱中症のため2試合続けて棄権したこともあって、出場を取りやめた。
「やっぱりすごいな、と思っていただける状態で人前に出るのがプロじゃないかと。もちろんメジャーは魅力的な舞台ですけど、帰国後の国内での連戦を考えても、今回はやめておこうと」
国内では試合がなかった週をしっかりと調整に充てると、10日には北海道meijiカップで今季初優勝。AIG全英女子オープンで優勝した山下美夢有の凱旋試合として注目された一戦で、多くのファンを魅了した。
「海外メジャーで勝つのは本当にすごい。尊敬します。でも、ゴルフを通して元気や勇気を伝えるやり方は、他にもいろいろあると思う」
積極的なファンサービスの裏で、人目につかない時間のほとんどは肉体強化、メンタルトレーニング、食事療法などといった地道な調整に費やしている。「誰よりもやっているという自負はあります」。すべてはプロゴルファーとして、元気や勇気、ポジティブさを伝えていくため-。「ゴルフの力」を示すためにも、今週のNEC軽井沢72で2週連続優勝、そして大会連覇を狙う。
◇河本結(かわもと・ゆい)
◆ゴルフ一家
1998年8月29日、愛媛県松山市生まれ。両親の影響で5歳からゴルフに取り組む。1学年下の弟・力も姉の背中を見てゴルフを始め、後にプロゴルファーに。
◆黄金世代の一員
勝みなみ、畑岡奈紗、渋野日向子らと同い年の26歳。サッカーや空手、バレーボールにも取り組んだり、大学進学を選んだりと、黄金世代の中では異色の経歴。
◆破竹の勢い
日体大在学中の18年にプロ転向。その年のステップアップツアー(下部ツアー)で4勝を挙げ、翌年のレギュラーツアー前半戦の出場権を獲得。3月のアクサレディースでツアー初優勝。
◆アメリカ挑戦
19年の年末に米女子ツアーの最終予選会に挑戦し、9位で翌年の出場権を獲得。20年初戦のゲインブリッジで8位に入るなど実力を示したが、翌21年途中にツアー撤退と帰国を発表。
◆低迷、そして復活
23年は国内女子ツアーで年間ポイントランキング85位と低迷しシード落ち。だが直後の最終予選会で4位に入り、24年は年間7位に急浮上。さらに今年は開幕以来、常に優勝争いを演じている。





