【中嶋常幸の眼】松山英樹はパット正確、少ない軸のぶれ

 「米男子ゴルフ・マスターズ・最終日」(11日、オーガスタ・ナショナルGC=パー72)

 1934年に創設されたマスターズ。男子ゴルフのメジャー4大会のうち、毎年、同じコースで開催される唯一のメジャーに挑み続けた多くの日本のゴルファーたちが、優勝者に与えられる「グリーンジャケット」の高くて厚い壁にはね返されてきた。青木功、尾崎将司、中嶋常幸の“AON”も届かなかったメジャー制覇。宮本留吉の初挑戦から89年、ついに松山英樹が負の歴史に終止符を打った。

  ◇  ◇

 松山英樹が、ついに日本男子初のメジャー制覇を達成した。私は何度もあの大舞台の厚い壁にはね返されており、最後まで勝ち切る難しさが分かっているつもりだ。そのせいか、解説を務めたTBSテレビのマイクの前で「こんなにうれしい日が来るとは」と涙が止まらなかった。

 技術的にはショットもアプローチもパットも総合的に精度が高かった。特に鍵になったのはパットの正確性だ。各ホールの「仕上げ」となるパットが悪ければスコアにならない。腰のベルトを注意して見ていると、大事な場面ではほとんど動かず、軸のぶれが少なかったことが分かる。

 アイアンショットも安定感があり、チャンスを重ねた。最終日の15番で第2打をグリーンオーバーして池に入れるなど、最後の方で少し荒れたが、それ以外に大きなミスは見当たらない。初日から3日目まで、毎日イーグルを記録できたのも、気持ちよく回れた要因だろう。

 印象に残ったのは、表情の柔らかさだ。以前は完璧なプレーを求めるのか、大きな失敗でもないのに怒ったような顔ものぞいた。今回、緊張の中でも余裕が感じられたのは、今年から目沢コーチがスタッフに入った影響が大きい。今まで松山一人で背負ってきた技術的な問題を、コーチに相談できるようになり、精神的に行き詰まることがなくなったとみている。

 メジャーの優勝争いは初めてではなかったし、米ツアーで苦い思いも多い。そんな経験が生きて、日本のゴルフ史に残る快挙となった。(プロゴルファー・中嶋常幸)

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