大の里 涙の復活V 苦しんだ1年「長かった。うれしいのが一番」 相星決戦も重圧に打ち勝つ「腹を決めて」
「大相撲秋場所・千秋楽」(27日、両国国技館)
横綱大の里が涙の復活を遂げた。大関安青錦との相星決戦を制し、12勝3敗で6場所ぶり6度目の優勝を飾った。昨年九州場所で負傷した左肩の影響で低迷が続いていただけに、賜杯を前に大粒の涙を流し、感激を隠せなかった。師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)への感謝とともに、13勝以上のハイレベルな優勝を次の目標に掲げた。
表彰式の際に流れた君が代。土俵を前に大の里は涙をこらえることができなかった。「本当にまた優勝できんのかなって考えた時期もありました。師匠が支えになってくれた。土俵下に親方がいて、目の前で優勝を見せられたのはうれしいです」。初優勝した時以来の号泣に、1年間の苦悩が表れていた。
圧倒した。取組前は支度部屋で入念に突き押しの動作を確認。厳しい表情で上がった土俵では、立ち合いもろ手ではじき、さらなる突きで安青錦の体を起こし、一気に突き出した。終盤の連敗で相星決戦に追い込まれたが「切り替えて気持ちを作った。腹決めてやるしかない」と圧倒した。
昨年の秋場所で昇進後初優勝を飾り、臨んだ翌九州場所。優勝争いで先頭を走る13日目の安青錦戦で勝利も左肩を痛め、自身初の途中休場に追い込まれた。今年は10勝→途中休場→全休→9勝と不本意な成績だった。
二所ノ関親方は今年夏場所で全休が決まった際「堪(こた)えますよ。地獄だと思う」と弟子の心境を察した上で「初めて自分の体と向き合って成長してくれれば。ケガでもしない限り、自分の体の研究、ケアは考えないですから」と期待していた。
9勝に終わった名古屋場所。12日目を終えて6勝6敗で途中休場もささやかれたが「どうなろうと15日間出ると決めていた」と“皆勤負け越し”も辞さない覚悟だった。親しい関係者には「今場所はまずしっかり15日間出る。来場所は期待してくれ」と、秋場所での復活優勝を誓っていた。
秋巡業は相撲を取らない日も、腕を伸ばして手のひらを上下に返し続ける地道な肩のトレーニングを、汗でびっしょりになりながら続けた。最終日には「あの経験があったからっていうようなことを言ってみたいですね」と手応えを口にしていた。
狙い通りの優勝でも、重圧は計り知れなかったのだろう。表彰式を終え「すごく1年が長かった。ここ数場所、光を浴びることがなかった。うれしいのが一番だった」と涙の理由を語った。
2025年夏場所後に、初土俵から所要13場所の史上最速で横綱に昇進し、唯一無二を掲げた第75代横綱。表情を引き締め「ハイレベルな優勝をしないといけない」と13勝以上、未体験の全勝を目標に掲げた。
◆大の里泰輝(おおのさと・だいき)本名・中村泰輝。2000年6月7日、石川県津幡町出身。新潟・能生中に相撲留学し、海洋高に進学した。日体大では1年時に学生横綱、3、4年時はアマチュア横綱など個人14冠。二所ノ関部屋に入門し、23年夏場所に幕下10枚目格付け出しで初土俵。24年初場所新入幕。新小結の同年夏場所で初優勝。同年九州場所で大関昇進。25年名古屋場所で横綱昇進。優勝6回。殊勲賞2回、敢闘賞3回、技能賞3回。得意は突き、押し、右四つ、寄り。しこ名の由来は大正末期から昭和初期に活躍した小兵の名大関「大ノ里」から。趣味はスポーツ観戦(高校野球、阪神ファン)。家族は父、母、妹。190センチ、188キロ。
