JOC前会長・山下泰裕氏 熊本地震から1カ月「胸を痛めている」 望郷の念は人一倍「何とか歯を食いしばって」

 熊本県で震度7を観測し、38人が死亡した地震から28日で1カ月となった。柔道の1984年ロサンゼルス五輪男子無差別級金メダリストで、頸髄(けいずい)損傷のため長期療養している日本オリンピック委員会(JOC)前会長の山下泰裕氏(69)が28日までに共同通信の取材に応じ、被害を受けた故郷について「つらい思いがある。なかなか言葉が出ない」と率直な心境を語った。

 熊本県山都町出身の山下氏は地震発生から被災地の状況をニュースなどで確認しており「地震が起きた頃は暑さの真っ盛りで、天気予報を見ると熊本は今も暑い。断水や停電もあり、ひどいというよりむごい。胸を痛めている」と話す。

 熊本城や阿蘇山など思い出深い場所は数多い。今回の地震後に爆発が起きた嘉島町の大型商業施設「イオンモール熊本」には両親と出かけて服をプレゼントし、一緒に食事もした。「自然の中で伸び伸びと育ち、そこで柔道に励んだことが人生の背骨になっている。私にとって、熊本はかけがえのない生まれ故郷だ」と望郷の念は人一倍だ。

 それだけに復興を願う気持ちも強い。「この厳しい環境で何とかして歯を食いしばって、耐えていただいて、早く鈴虫が鳴くような秋が来ないかなと思っている」と、暑さの中で不自由な生活を強いられている被災者を思いやった。

 山下氏はJOC会長在職中の2023年10月に温泉施設で転倒し、首から下がほとんど動かせなくなった。現在も車いすでの生活が続き「2メートルほど下のところへ転落しても、私は生かされている。両手両足がまひになっても、少しでも前向きに生きていく。それが多少なりとも人々を励ます形につながればありがたいし、さらに頑張っていく」と強い決意を述べた。

 ◇山下 泰裕(やました・やすひろ)1957年6月1日、熊本県山都町出身。小学4年で柔道を始め、九州学院高1年時にインターハイで優勝した。2年時に東海大相模高に転校。東海大に進学し、2年時の全日本選手権で初優勝。85年まで9連覇を達成した。世界選手権は79年パリ大会95キロ超級、81年マーストリヒト大会は同級と無差別級、83年モスクワ大会は95キロ超級を制した。84年ロサンゼルス五輪無差別級金メダル。同年に国民栄誉賞を受賞した。85年6月に現役を引退。2019年から25年まで日本オリンピック委員会の会長を務めた。

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