トップアスリート国立強化施設にeスポーツ仲間入り 総工費約7700万円で倉庫改築 リアルスポーツと同じ医科学アプローチで技術向上狙う
愛知・名古屋アジア大会(9~10月)で、正式なメダル種目として実施されるeスポーツの日本協会が31日、味の素ナショナルトレーニングセンターに新設されたeスポーツの強化施設「HPSC eスポーツラボ」を公開した。
味の素ナショナルトレーニングセンターは、東京都北区にあるトップアスリート専用の国立トレーニング施設。そこにeスポーツが仲間入りした。倉庫だった180平米の部屋を改築し、16台のパソコンや大型モニターなどを設置。日本協会を含めたゲーム専門家と相談しながら、通信環境や動作面に不自由ない高スペックのパソコンをそろえ、整備に約4100万円、機材に約3600万円を投じた。バーチャルスポーツができるエリア、選手が休息を取るリラックスゾーンも作り、ゲームにおける最高の環境を整えた。
このHPSC eスポーツラボでは、心拍数の計測、画面のどの部分を凝視しているかを判別するアイトラッキング(視線計測)、サーモグラフィーを用いた体温測定などが行える。ゲーム中の体の変化を数値として可視化し、選手のコンディション調整や技術向上につなげることが狙い。リアルスポーツと同様、医化学を利用して競技力の向上を目指している。
愛知・名古屋アジア大会代表で「ぷよぷよ」をプレーする栗原悠輝(11、プレーヤー名・ゆうき)=東京ヴェルディeスポーツ=は、この日、初めてアイトラッキングを経験した。「思ったより相手の盤面(ぷよを積んでいる画面のこと)を見ていなかった」と自分のプレー画面に集中していたため、対戦相手の動きを見ていない自身のくせを発見。「アイトラッキングを使って鍛えていきたい。相手に少ない連鎖でお邪魔ぷよを送る中盤戦の技術が上がると思う」と、成長のきっかけをつかんだ。
昨年11月には、スポーツ医学や栄養の講義を選手に向けて実施。今年3月にはゲーム試合前と試合後の脳派を計測するなど、リアルスポーツで培ってきた知見を、そのままeスポーツに活用してきた。今後はeスポーツの強化と研究を進め、それをさらに、五輪とパラリンピックに還元していくことが目標。3月のミラノ・コルティナ・パラリンピックでは、VRを用いた没入型デジタル技術で、選手支援を行ってきた。久木留毅HPSCセンター長は「五輪からパラリンピックへ知見を展開してきたように、eスポーツに展開することで、またパラリンピックと五輪に知見が展開できる。2028年ロサンゼルス五輪は、テクノロジーの戦いになってくと思う。そういう意味で、eスポーツラボの役割はすごく大きい」と意義を語った。
国際オリンピック委員会(IOC)の動きとしては、トーマス・バッハ前会長時代に将来的な五輪採用の動きもあったが、現在は「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」として独立した枠組みが構築され、実質的な一区切りを迎えた。しかしアジア大会では22年大会に続き、今年9~10月の愛知・名古屋大会でも正式な種目として採用。日本からは「ぷよぷよ」「eFootball」「ポケモンユナイト」など9種類のゲームで、25人の代表選手が出場し、アジア1位を狙う。
日本史上最年少・11歳での出場となる、ぷよぷよ代表の栗原は「いろんな記録を作っていきたい金メダルを取れるように頑張りたい」と気合。「eFootball」代表の貴田英貢也(23、プレーヤー名・Tess)=KIWOOM DRX=は、「大会のために、たくさんの方々に支えられていると思う。自分のためじゃなく、支えてくれている人のためにもメダル獲得に向けて日々練習していきたい」と意気込んだ。
