引退決断の高木美帆「自分がかっこいいと思える存在でいたい」 素を垣間見られた北京五輪女子1000メートル後の取材
夏季を含めて日本女子最多の五輪メダル通算10個を誇るスピードスケート女子の高木美帆(31)=TOKIOインカラミ=が4日、世界選手権(5~8日、オランダ・ヘーレンフェイン)を最後に現役を退く意向をインスタグラムで表明した。五輪で金2個を含む通算10個のメダルを獲得し、W杯通算38勝は男女を通じて日本勢最多。輝かしい功績を誇る第一人者が決断を下した。
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「速くなりたい」。その一心で、スケートと向き合い、考え続けてきたのだろう。取材では質問に対し、天を仰いで一呼吸置き、そして驚くほどスラスラと答えをくれる。記者は勝手にタンスの引き出しを開けるようだと思っていた。その質問なら答えは靴下か、という具合に。
気持ちの変化やさまざまな思考の過程を言語化するのがとてもうまく、深い。こちらも必死で意図を理解する。高木の取材後はいつも頭が疲れるのだが、それが新鮮で面白かった。
高木が取った個人種目唯一の金メダル、北京五輪女子1000メートル後の取材は興奮気味で冗舌で、冷静に話しているようで喜びがあふれ出ていて。タンスの奥底にしまっていたのか、はたまたタンスそのものだったのか、素の高木を垣間見られたこと、そして金メダルの喜びを分けてもらえたような心境で、こちらもうれしく思ったことをよく覚えている。
北京五輪前、高木にキャリアについて尋ねたことがある。「五輪に対しては、終わったらその都度考えるスタンス。次もあるという考えは甘えが出てしまう」と話していた中で「長く、動けるまでスケートを続けるタイプではない」と断言したのが印象的だった。
それはきっと、高木の中での信念が一貫しているから。「世界新とか何秒出したいとか、そういう意味での究極の目標は多分ない。でもあるとしたら、自分がかっこいいと思える存在でいたい」。ここが、高木の思うかっこいい引き際だったのだろう。
天才少女と言われたバンクーバー五輪も、代表落ちを経験したソチ五輪も、多くのメダルを手にした平昌五輪、北京五輪も、悲願をかなえきれなかったミラノ・コルティナ五輪も、その全てがかっこいい、唯一無二の歩みだったと思う。(デイリースポーツ・國島紗希)





