男子200メートル鵜沢飛羽 「19秒台の壁」重圧で突発性難聴も「吹っ切れた」 史上3人目の決勝へ「それ以外考えていない」

 日本選手権の男子200メートル決勝を制し、歓声に応える鵜沢飛羽=7月6日 
 日本選手権の男子200メートル決勝で優勝した鵜沢飛羽=7月6日
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 陸上の世界選手権東京大会は13日から21日までの9日間、国立競技場をメイン会場に開催される。出場選手紹介最終回は、男子200メートルと400メートルリレー代表の鵜沢飛羽(とわ、23)=JAL=にスポットを当てる。社会人1年目の今季は200メートルで好記録を連発しており、2003年の末続慎吾、17年のサニブラウン・ハキームに続く日本代表3人目の決勝進出を狙う。19秒台の壁へのプレッシャーから突発性難聴を発症するなど苦悩と付き合いながらも、記録を追い求める覚悟を胸に、国立の舞台で主人公となる。

 苦しみ抜いた先の光へ走り続ける。鵜沢は「とりあえず決勝。それ以外考えていない。今年は高望みはしない。決勝に行くイコール、タイムは上がってくる。準備はしています」と決意表明。日本選手権3連覇中の男が世界の舞台でメダルを狙う。

 社会人1年目の今季は好記録を連発。5月3日の静岡国際陸上予選で20秒13の自己ベストを出すと、アジア選手権と日本選手権は、ともに20秒12で更新。8月のナイトゲームズ・イン福井は20秒11で、またしても自己ベストをたたき出した。末続慎吾が持つ20秒03の日本記録に0秒08まで迫り「準備はできている。いつ走っても大丈夫」と好調ぶりをうかがわせた。

 ただ、快進撃を続ける鵜沢には、プレッシャーも重くのしかかっていた。日本新記録への期待と19秒台の壁。日本選手権の決勝のレース後には右耳に突発性難聴を患っていることを告白し「期待してくれているのは分かるし、応えたいと思うが、ちょっと限界がきている」と本音を吐露した。

 それでも、世界選手権は待ってはくれない。切り替えて練習に励む鵜沢は「吹っ切れて、今は自分がどう走りたいか、どうなりたいかというのが強い」。現在も突発性難聴の治療中で、全く聞こえない日もあるというが「おそらく左耳が聞こえていれば大丈夫」と懸命に前を向いた。

 陸上競技に多くの時間を費やすが、癒やしもある。実は「オタク」と自称するほどの漫画、アニメ好き。自宅には趣味部屋をつくり、漫画を約1万冊、フィギュアを約300個もコレクションしているという熱中ぶりだ。

 漫画やアニメは鵜沢にとって「人生の教科書」だと話す。「自分の心を動かしてくれる。世界中の人に認められていて、あんなふうになりたい」と目を輝かせ「(キャラクターの)疑似体験。それができるのが日本代表として挑む場だと思う」。大好きな世界観の中に、陸上界で活躍する自分の姿を投影する。

 世界陸上開幕まであと1日。「決勝に向かうためのことはやってきた。今までで一番状態はいい」。世界を巻き込むキャラクターのように、国立競技場で主人公になってみせる。

 ◆鵜沢飛羽(うざわ・とわ)2002年11月25日、宮城県出身。築館高から筑波大に進学。大学2年時には200メートルで日本インカレ優勝。24年には日本選手権を連覇し、パリ五輪で準決勝に進出した。25年にJALに入社。自己ベストは20秒11。182センチ。趣味は漫画を読む、アニメを見ること。

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