首の大ケガ、父の急死 逆風乗り越え日翔志が新入幕「琴桜と数年ぶりに戦いたい」大相撲番付発表
「大相撲秋場所」(14日初日、両国国技館)
番付発表が1日に行われ、日翔志(28)が新入幕を果たし、埼玉・草加市の追手風部屋で会見した。
23年九州場所で新十両も1場所で幕下に陥落。今年春場所で十両に復帰以降は3場所連続で勝ち越し。名古屋場所は東十両6枚目で10勝を挙げた。「入門してからいろいろあった。幕内に上がれると思っていなかったので感慨深い。辞めようと思ったことは多々ありました」と語った。
埼玉栄、日大で実績を重ねた。卒業後は「プロに行く覚悟ができていなかった」と、日大職員として相撲部コーチを務めながら、アマチュア大会に出場。しかし、新型コロナ禍で大会が限られ、高校同級生である琴桜の活躍などに触発され、角界入りを決意した。
21年夏場所で初土俵。同年秋場所で序二段優勝を果たしたが、その直後の稽古中に首を大ケガ。頸髄損傷で2カ月間ほぼ寝たきりとなり、3場所連続で全休した。リハビリ中の22年3月には父の分男(のりお)さんが57歳で肝硬変のため急死。23年九州場所で新十両を果たしたが、1場所で幕下に陥落し、7場所かけて関取復帰した。「再十両で気負わずできた。体が大きくなり、圧力負けしなくなった」と、新入幕を呼んだ。
日翔志は師匠の追手風親方(元幕内大翔山)、埼玉栄先輩の兄弟子・大栄翔、高校先輩の湊川親方(元大関貴景勝)に「お前ならやれる」と支えられた。苦労人らしく「ケガなく15日間やれれば」と目標を語りつつ「琴桜関と数年ぶりに戦いたい。プロに行きたいと思った理由の一つ」と語った。
大相撲入りに大反対だった父に、墓参りを兼ねて報告する予定で「喜んでくれるとうれしい」としみじみ話した。今は和歌山で暮らす母・泉さん、兄・日出夫さんからは祝福されたという。
東京・立川市出身。横綱大の里を輩出した新潟・能生中に相撲留学するも、3年の全中個人3位に入った直後に事情があり地元中学に転校。高校には進まず、解体業などで生計を立てるつもりだったが、埼玉栄・山田道紀監督の熱心な勧誘に応え競技を続けた。
波瀾(はらん)万丈の相撲人生。日翔志は「周りから丸くなった、優しくなったと言われます」と、穏やかな表情を浮かべていた。




