琴勝峰が悲願の初優勝 安青錦破り本割で決めた!平幕8場所ぶり ようやく笑顔「感情が追いついてない」 IGアリーナ初代王者
「大相撲名古屋場所・千秋楽」(27日、IGアリーナ)
琴勝峰が1差で追っていた安青錦を引き落とし、13勝2敗で初優勝を果たした。2023年初場所千秋楽、貴景勝との優勝を懸けた相星決戦に臨んだホープで、ケガの影響で十両に転落するなど停滞していたが一気に飛躍。昨年春場所の尊富士以来8場所ぶりの平幕優勝で、殊勲賞と敢闘賞とともにIGアリーナ初代王者に輝いた。3場所連続制覇を逃した新横綱大の里は大関琴桜を寄り切り11勝4敗。若隆景は霧島との関脇対決を寄り切りで制して10勝目。秋場所(9月14日初日、両国国技館)で大関とりに挑む。
賜杯を抱くと、琴勝峰のポーカーフェースが初めて崩れた。朝稽古から変わらず引き締めていた表情は、ついに口角が上がってニヤリ顔。混戦の15日間も、6日目から破竹の10連勝で駆け抜け「感情が追いついてない感じで。でも、うれしいです」と息を吐いた。
不動の心が土俵で生きた。師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)をもってして「緊張しているかどうかは本人も分からないぐらいじゃないか」と言わせる鉄仮面。ただ、琴勝峰の心の内は静かだった。「肩の力が抜けていて、思い切っていった」。立ち合いから低く来る安青錦にも構わず出た。
「まわしを取られたくなくて、起こし上げたかった」と狙い通りのいなしで、徐々に安青錦の上体が上がった。踏ん張りを利かせる相手を最後は払って土俵に転がし、平幕同士の大一番を制した。
師匠が「弟子を褒め続けるのもどうかと思うが、この相撲を続ければ次の大関かなって思う」と認める大器。部屋では大関琴桜、弟の琴栄峰と3兄弟のように育ち、環境に恵まれた。出世もとんとん拍子。同期の横綱・豊昇龍よりも1場所早い、20年名古屋場所に新入幕を果たした。
しかし、これまで幕内ではケガや不調に泣かされ、優勝も三役も遠かった。今場所前も夏場所の休場理由となった右足肉離れを起こし、決して順調ではなかった。
躍進の理由は親方衆の教えを守ったこと。優勝を目前にした23年初場所で行っていた体幹トレーニングを再開し、四股も後ろにかかり過ぎていた重心を修正。頭ではなく胸からいく立ち合いに変更すると、13日目に見せた大の里にも当たり負けない強さを発揮していた。
地道に、愚直な積み重ねの先につかんだ初の賜杯。努力の成果に「一日一日やってきた結果だと思う」と胸を張る。次は三役、そして大関昇進へ。いつもの淡々とした表情で「うれしかったのはうれしかったが、終わりじゃないんで」と先を見据えていた。
【琴勝峰アラカルト】
★本名 手計富士紀(てばかり・としき)
★生年月日 1999年8月26日
★出身地 千葉県柏市
★相撲歴 3歳から相撲を始め、松葉中3年の2014年に全国都道府県相撲選手権の無差別級で優勝。埼玉栄高に進み、同級生には王鵬、栃大海がいた。3年時に佐渡ケ嶽部屋に入門
★初土俵 2017年九州場所
★しこ名の由来 「琴」は師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)から。「勝」は母のカツ江さんから。「峰」は上を目指すという意
★得意 右四つ、寄り
★好きな食べ物 焼肉
★趣味 漫画
★サイズ 身長190センチ、体重167キロ
★家族 妻・珠奈さん(25)、長男・寿冨ちゃん(1)





