「陸上・日本選手権」（５日、国立競技場）

　女子８００メートル決勝は久保凛（１７）＝東大阪大敬愛高＝が日本新記録の１分５９秒５２で２連覇した。昨年自身が樹立した記録を０秒４１更新した。男子１００メートル決勝は桐生祥秀（２９）＝日本生命＝が１０秒２３で制し、５年ぶり３度目の優勝を果たした。男子１１０メートル障害決勝は日本記録保持者の泉谷駿介（２５）＝住友電工＝が１３秒２２で優勝。２位の野本周成（２９）＝愛媛競技力本部＝とともに日本陸連が定める選考基準を満たして世界選手権代表に決まった。男子８００メートル決勝は落合晃（１８）＝駒大＝が１分４５秒９３で２連覇した。

　ぶっちぎりでゴールラインを超えると、高校生らしいあどけない笑顔が光った。久保が自身の日本記録（１分５９秒９３）を塗り替え、２連覇を達成。「自己ベストを出すことができて、納得のいく走りができて良かった」とはにかんだ。

　スタートから先頭に立ち、レースを引っ張った。ラスト１周からは後続を振り切り、最後は独走状態でゴール。「前半から自分のレースをして、２周目落ちないようという部分で、全部自分でいこうと思っていた。そのレースができて良かった」と積極的な走りで頂点に立った。

　会場に駆けつけた父、母、兄のエールが背中を押してくれた。「『勝てるように』じゃなくて『楽しんで』って言ってくれた。リラックスして走れた」。留守番の愛犬・フウタの存在も原動力で、「預けているので、その分頑張らなくちゃ」と、家族の応援をパワーに変えて駆け抜けた。

　「標準を切ることができなくて悔しい」と、厳しい表情も浮かべる。世界選手権の参加標準記録（１分５９秒００）の突破を目標に臨んでいただけに心残りも。ただ、開催国枠エントリー設定記録（２分００秒０９）は突破済みで、世界へ挑むチャンスはまだまだある。「もっとレベルを上げたい」と進化を誓った。

　「東京で開催されるということでワクワクしかない。絶対に出場する気持ちで臨む。８００メートルは久保凛だと思ってもらえるレースをしたい」。照準は既に世界。１７歳の女子高生が大舞台に羽ばたいてみせる。

　◆久保凛（くぼ・りん）２００８年１月２０日生まれ。和歌山県出身。東大阪大敬愛高３年。８００メートル日本記録保持者。２３年に全国高校総体で初優勝。２４年は大会新記録で連覇を果たした。２４年日本選手権で初優勝。いとこはサッカー日本代表ＭＦの久保建英。