ウルフ「悔いは全くない 晴れやか表情で完全燃焼報告 「今はなる気はない」指導者の道は消極的
柔道男子100キロ級で東京五輪金メダリストのウルフ・アロン(29)=パーク24=が10日、都内で引退会見を行った。今月8日の全日本実業団体対抗大会が最後の試合となり、「悔いは全くない」と、柔道選手として完全燃焼したことを晴れやかに報告。今後については明言しなかったものの「自分自身が表に立ちたい気持ちが強い」と指導者への道は否定し、関係者によれば今月中にも改めて報告の場を設ける予定だという。柔道界きっての人気者の行方に注目が集まる。
涙はなく、ウルフは晴れやかな表情で23年間の競技生活に区切りをつけた。「柔道は僕の人生そのものだった」。伸びた長髪をオールバックで決め、ワイルドにたくわえた口元のひげから時折こぼれる笑みには充実感がにじむ。「柔道人生は全うされた。去年パリ五輪が終わった段階で燃え尽き、やり切った」。6歳から柔道を始め、屈指のパワーと磨き上げた技術、高い柔道IQで五輪、世界選手権、全日本選手権の「柔道3冠」も成し遂げた。「悔いは全くない」と胸を張って言った。
引退を決断したのは昨年2月ごろだった。東京五輪以降は低迷したが、歯を食いしばって再び五輪切符をつかみ「4年後を考えず、パリで終わりと考えないと持たない」と引き際を決意。メダルには届かなかったものの2度目の夢舞台を経て、ファンに見守られながら別れを告げた。
柔道界屈指の人気者とあって気になるのは今後だが、「人に自分を見せること、見られることが好きなので、そういうことも全て選択肢になる」と話すにとどめた。世界選手権(13日開幕、ブダペスト)が迫っているため現日本代表に配慮した形だが、今月中にも改めて進路報告の場を設ける。指導者への道については「将来的にゼロではない」としつつも、「今はなる気はない」と消極姿勢。「まだ自分自身が表に立ちたい気持ちが強い」と渇望を明かした。
関係者によれば、既にテレビ出演や解説のオファーも続々入っており、登録者12万人を誇るYouTubeも引き続き更新する予定という。「今後もメディアやいろんな活動をしていく中、バックボーンとして柔道は(自分の中に)ずっとある」。畳の上で積み上げた輝かしいキャリアを引っさげ、新たなフィールドでも戦い続ける。
◇ウルフ・アロン 1996年2月25日、東京都葛飾区出身。米国人の父と日本人の母を持ち、6歳の時に春日クラブで柔道を始めた。東海大浦安高時代は2年時に団体で高校3冠を達成し、3年時は個人でインターハイ優勝。2017年世界選手権で優勝し、18年全日本選手権を制覇、21年夏の東京五輪で金メダルを獲得したことで史上8人目となる「柔道3冠」を達成した。左組み手で、得意技は大内刈り、内股。趣味は料理。181センチ。