豊昇龍がまさかの完敗 「荒れる春場所」波乱のスタート 見せ場皆無で静まる場内 新横綱の重圧背負うも「集中」で奮起誓う
「大相撲春場所・初日」(9日、エディオンアリーナ大阪)
新横綱豊昇龍(25)=立浪=が衝撃の完敗スタートを喫した。小結阿炎(30)=錣山=にわずか2秒0、一方的に突き出された。新横綱が初日に敗れるのは1995年初場所の貴乃花以来。阿炎は“食あたり効果”を強調し、42本の懸賞金をゲットした。大関陣は、かど番の琴桜は若元春に寄り切られ、大の里は若隆景を切り返しで下し、明暗が分かれた。
横綱が敗れる波乱にも、場内は沸くどころか静まり返った。豊昇龍は天を仰ぎ表情が緩んだ。あまりにも完敗すぎた。
立ち合いで決まった。阿炎の強烈な突き押しで一方的に土俵を割った。見せ場皆無。支度部屋に戻った豊昇龍は「失敗しました。はたきもあるから考えた。一瞬で来た」と、静かに振り返った。
横綱としての重圧を「それはもちろんあるでしょ」と認めた。取組前の支度部屋、目をつぶりめい想のように集中する動作は大関時代にはなかったものだ。初場所の千秋楽で痛めた右肘には分厚いサポーターが巻かれ、「他の力士にも痛いところはある。言い訳にはしない」とも語った。
もっとも、昨年は春から秋まで4場所連続で初日に黒星。春場所に限れば5年連続で初日を落とした。それだけに「きょうの負けはしようがない。次を集中したい」と、切り替えも早かった。
叔父の朝青龍と同じ雲竜型土俵入りは「(相撲より)緊張した」と吐露したが、口調にはまだ余裕があった。八角理事長(元横綱北勝海)からは「勝ちたい気持ちが強い。明日からでしょ」と奮起を促された。
師匠の立浪親方(元小結旭豊)は「序盤の入り方でしょう。今日は大事」と取組前に話していたが、この完敗を乗り越えるしかない。
新横綱の黒星発進は1995年初場所の貴乃花以来だが、貴乃花はこの場所を13勝2敗で制している。豊昇龍の「明日から大丈夫だと思います。しっかり集中してやります」という言葉を信じたい。