照ノ富士 緻密に考え逆算 どん底から横綱へ 精神力と理解力&言語化力 親方としての活躍楽しみ
第73代横綱照ノ富士(33)=伊勢ケ浜=が17日、現役を引退した。日本相撲協会に承認され、両国国技館内で会見。大関から序二段まで転落しながら、不屈の闘志で綱を張り「本当に激しい相撲人生だった」と感慨に浸った。そして完全燃焼した安どの笑みも浮かべた。今後は「照ノ富士親方」として、伊勢ケ浜部屋で後進の指導にあたる。
「相撲はそんなに難しいことじゃない。単純」。期待したのとは反対の言葉に意表を突かれた。昨年4月の春巡業。ただ、照ノ富士の語った内容は奥深いものだった。
「俺は右四つでしょ。左前(まわし)をとるなら、そこの筋肉をつける」。最初に頑丈な体を作る。そのために番数とトレーニングをこなす。そして、自分の形になるために必要な、腕なら腕、足なら足の細かい部位を鍛え、それを稽古で相撲に落とし込んでいく。「相撲は難しくないけど、そういう体を作るのが難しい」と言った。
その体作りは壮絶。大関から序二段まで転落して復帰後、復活優勝までの1年半で「20日しか筋トレは休んでいない」。会食後に、夜中の1時から3時までジムで追い込むこともあった。「徹底して調べて、徹底して感じとって」新しい肉体を作り上げた。一緒にトレーニングした関取は、何度も嘔吐(おうと)し「二度とやりたくない」とこぼしたそうだ。
緻密に考え、逆算し、どん底から横綱に上り詰めた。その経験は唯一無二。「今まで経験したことは全部(頭に)メモできている。こういうケガをして、こう筋肉をつけてカバーしたとか。いつか人に教える立場になった時にね」。不屈の精神力と圧倒的な理解力&言語化力。親方としての活躍が楽しみだ。(2022~24年デイリースポーツ大相撲担当・藤田昌央)





