日本選手権・男子100メートル昨年王者の坂井隆一郎 初の五輪出場へ「日本選手権までには」9秒台出す 「サニブラウンに勝つ」

 カメラに向かって笑顔でポーズを決める坂井隆一郎(撮影・田中亜実)
 男子100メートル決勝で小池祐貴(左)らとの接戦を制し、初優勝を決めた坂井隆一郎(中央)
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 陸上男子100メートルで昨年6月の日本選手権を初制覇した坂井隆一郎(26)=大阪ガス=がこのほど、群馬県内の陸上競技場でデイリースポーツの単独取材に応じた。100メートルと400メートルリレーで出場した昨年8月のブダペスト世界選手権を振り返りながら、今夏のパリ五輪出場と日本勢5人目となる9秒台への熱い思いを語った。

 快晴の空の下で、坂井は時折苦しそうにしながらも、生き生きとした表情で鍛錬していた。隣で的確に指示を飛ばすのは、群馬大教授で、コーチを務める吉田浩之さん。約3時間の練習を終え「今日は本当に充実した練習だった。スタートをガッツリして、いい感覚がつかめた」と汗を拭った。

 一気に注目を浴びたのは、一昨年6月の布勢スプリント。世界選手権の参加標準記録を突破する10秒02の自己ベストを出し、同代表に決まった。当時は得意とするスタートの速さで注目され、世界選手権のリレーでも2022年大会予選、23年大会の予選と決勝で第1走者を務めた。

 ただ、昨季は得意なスタートが「あまり出られない感覚があった」という。22-23年シーズン前のオフ練習で、スタート以外に重点を置いたことが影響した。世界選手権の個人で2大会連続の準決勝進出を逃した。

 この状況を見た吉田コーチは、冬季練習を前に「スタートから加速する中間までを、きっちりいい感じで走ることを定着してから」と提案した。取材日は「加速ドリル」として、ハードルに手を置いて足を繰り返し上げる練習を入念に行って、動きを確認。スタートの感触も確かめた。吉田コーチは「日本選手権より速いかもしれませんね」と笑いながら、調子は上々だと明かした。

 「地道」な練習の原動力は、世界を体感した経験にある。昨夏の世界選手権は「無自覚で走りがずれていて、どうあがいても、いい走りができなかった。悔しい大会になったかなっていうのは本当にあって」。複雑な思いの裏で、同じ日本代表のサニブラウン・ハキーム(東レ)が2大会連続で決勝進出。「本当にすごい」と生観戦したが、決勝では9秒台が5人で、サニブラウンは6位だった。

 「世界の壁というか、本当に速い選手もまだまだいるんだなと肌で感じた」。自己ベストをはるかに上回るレース結果は、モチベーションにつながった。

 9秒台は「いけるとは思っているけど、正直未知の世界」と具体的なイメージは湧いていない。ただ「今は精度も自分のスキルも上がってきているので、それを完璧にできれば9秒台が出るんじゃないかな」と達成できそうな予感もしている。

 100メートルのパリ五輪代表選考において、坂井は参加標準記録の10秒00を期間内に突破した上で、日本選手権(6月、新潟)で優勝することが第一目標となる。9秒台も「日本選手権までには」と見据える。

 サニブラウンの存在も大きな刺激だ。「リレーでは本当にめちゃくちゃ頼もしい仲間だけど、日本選手権とかになると一番脅威。サニブラウン選手に勝たないとオリンピックであろうが、世界選手権であろうが勝ち進めないと思うので、『サニブラウンには勝つ』っていう意識でやっていかなきゃいけない」と気を引き締める。

 東京五輪の出場は逃した。「並大抵ではオリンピックの個人の代表にはやっぱりなれないな、っていう気持ちが本当にあるので、そのことを頭に置きながら、本当にがむしゃらに頑張らないといけない」。今季初戦は大阪での記録会(13~14日、長居)を予定。初の夢舞台へ、26歳のスプリンターが勝負の年を迎えている。

 ◆坂井隆一郎(さかい・りゅういちろう)1998年3月14日、大阪府豊中市出身。中学1年で陸上部に入ったことで競技を始めた。大阪高、関大を経て、大阪ガスに所属。日本選手権は22年は2位で、23年に初優勝。22年布勢スプリントで10秒02の自己ベストをマークした。世界選手権は22年に準決勝で敗退、23年は予選敗退。171センチ、64キロ。

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