【五輪コラム】大会後の明確なビジョン必要 問われる冬季五輪の将来
2008年の夏季五輪開催に次いで、北京での冬季五輪が開幕する。史上初の夏冬開催都市となる北京。だが、地球の温暖化がここままどんどん進めば、冬季五輪を開催した実績のある都市ですら、雪の降る日が少なくなる一方、雨に見舞われる日が多くなり、2度目、3度目の開催はできなくなるだろう。そんな指摘をカナダの大学の研究チームが発表した。
▽北京では人工降雪機多用
北京冬季五輪のスキー競技会場では人工降雪機が数多く用意され、実際に稼働している。雪不足への対応は既に現実だ。そう遠くない将来、冬季五輪の開催を目指す国と都市は、温室効果ガス削減の取り組みを進めているか、立候補を受け付ける国際オリンピック委員会(IOC)から問われることになるかもしれない。いずれにしろ、開催を望むなら、科学に基づく効果的な対応を研究しておく必要がありそうだ。
長期的視野が求められるこの問題への対応だけでなく、冬季五輪では夏季五輪以上に競技施設の新設と改修をどのように進めるか、大会施設の「後利用」について、明確なビジョンを持っていることが重要だといわれる。
▽立候補都市は減少
夏季、冬季を問わず五輪の開催に立候補する都市は少なくなった。立候補の意思を表明しながら、招致手続きの途中で断念してしまうケースも後を絶たない。その多くは地域市民から、貴重な税金は五輪開催のような巨大プロジェクトに投入するのではなく、子どもの教育環境をより良いものにし、自分たちが健康で快適な生活を送れるよう、身近な問題の解決のために使われるべきだとの声が上がるためだ。住民投票が実施され、開催反対派が推進派に勝利するケースが目立つ。
スキーのジャンプ台とボブスレーやリュージュなどのそり系競技の施設は、多額の建設費が必要なだけでなく、ごく少数の国を除けば競技人口が少ない上、一般市民の利用と春以降、秋までの全般的な利用度にめどが立ちにくい。「負の遺産」となる懸念が付きまとう。
競技施設の整備について、IOCは大会後に撤去できるように仮設で構わない、他の都市に施設があるなら遠方でもそれを活用すればいい、と開催都市の財政的な負担軽減を目的に、招致の規則と基準の見直しをここ数年進めた。
▽広域でも既存施設を推奨
北京大会の4年後、2026年冬季五輪はイタリアの2都市、約400キロ離れたミラノとコルティナダンペッツォで開催される。ミラノが主にスケートの、コルティナがスキーの会場となる。当選が決まる前から、両都市で大会開催に必要な施設の90%以上を既存施設と仮設で賄う計画だった。これがIOCから「われわれがまさに進もうとしている、地域住民に負担の少ない構想だ」と評価され、招致を争ったストックホルムを破った。
IOCはかつて「好ましい条件」として掲げていた「コンパクト開催」の理念を捨て去り、広域あるいは遠距離であっても、既存施設の活用を推奨するようになった。比較的規模の大きな、いくつかの室内アリーナを持つ都市で氷上の競技を、そこから遠く離れていても山間部の町とその周辺で雪上の競技を実施するミラノ・コルティナ方式は、冬季五輪の一つの将来像なのだろう。ひょっとすると、国境を越えた2都市による共同開催が実現する日も近いのかも知れない。(共同通信・竹内浩)





