羽生が「春よ、来い」でフィナーレ舞「今、1番伝えたい」自身も救われた希望の演目

 「フィギュアスケート・メダリスト・オン・アイス」(28日、ビッグハット)

 全日本選手権上位選手によるエキシビションが行われた。圧巻の演技で、5年ぶり5度目の全日本王者に輝いた羽生結弦(26)=ANA=が選んだプログラムは、「春よ、来い」だった。

 柔らかなピアノの音色と一体となり、氷上を風のごとく舞った。演技後のインタビューでは「そうですね。いつもより明るく。何よりもこの時期にピッタリというか、世の中に1番伝えたいメッセージだったので。本当に少しでも心が温かくなるような演技がしたかったなと思います」と、選曲の理由を説明した。

 男子の競技終了後の会見で、羽生はコロナ禍の中、今季を前に精神的に「どん底に落ちた」ことを明かしていた。

 「何か自分がやっていることがすごく無駄に思える時期があって…。皆さんの期待に応えられるのか、そもそも4回転アクセルって跳べるのか、とか。でも、僕に入ってくる情報では、やっぱみんなすごくうまくなっていて、1人だけ取り残されているというか。なんか1人だけ、ただただ、暗闇の底に落ちていくような感覚の時期があった。疲れたなって。もうやめようって思ったんですけど」。

 そんな時期を救ってくれたのが、このプログラムだった。「『春よ、来い』と『ロシアより愛を込めて』というプログラムを滑った時に、やっぱスケート好きだなって思ったんです。スケートじゃないと、自分は感情を出せない、全ての感情を出し切ることができないなって。だったらもうちょっと、自分のためにわがままになって、みなさんのためだけじゃなくて、自分のためにも競技を続けてもいいのかなって気持ちになった時が、ちょっと前に踏み出せた時でした」。

 苦境を乗り越えて、さらに滑りを研ぎ澄ませて帰ってきた羽生。その舞はコロナ禍の世に光を灯した。そして、エキシビション。日本に、世界に、「春」という希望の季節を届けた。

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