萩野公介、完全復活見えた2冠「自信になる」 200でも五輪標準記録を突破
「競泳・日本選手権」(5日、東京アクアティクスセンター)
東京五輪会場で行われ、男子200メートル個人メドレー決勝は日本記録保持者の萩野公介(26)=ブリヂストン=が1分57秒67で2年ぶりに優勝し、400メートル個人メドレーとの2冠を達成した。
0秒07差、萩野がわずかにリードして最後の自由形に突入した。「この差は絶対に譲らない」-。ひとかきひとかきに思いを込めた。「絶対勝ちたい」。今大会8レース目と疲労の色は濃かったが、魂の泳ぎでリードを広げフィニッシュ。電光掲示板を確認すると、力強く両拳を握った。スタンドの平井伯昌コーチも笑顔で応えた。
「今まで自分自身に負けて、なかなか(自分の泳ぎを)表現することができなかったけど、最後勝ててすごく幸せ。まだこのタイムじゃ世界と戦えないけど、自信になる」
2019年に約5カ月間休養。復帰以降もタイムは思うように上がらず、スタート前に自分を見失いかけたことが何度もあった。しかしこの日は「自分のことをコントロールして臨んだ」と萩野。「泳ぐのは自分。自分は今ここにいる」と言い聞かせた。レースと向き合い、自分を信じた。その中で勝負を制し、400メートル個人メドレーに続いて20年東京五輪の派遣標準記録を突破。まさに「会心のレース」だった。
派遣標準は19年世界選手権の決勝進出相当のタイム。自己ベストである日本記録1分55秒07とはまだ2秒以上の開きがあるが「タイムより、集中力と強い気持ちを持って臨めたことを評価したい」。復帰当初から掲げる「金メダル」が徐々に現実味を帯びてきた。
闘争心を取り戻し「子供に戻ったなと思う。純粋に水泳を楽しんでいる。自分が全力を出すことから話は始まる」。全力勝負に打ち込める自分が戻ってきたことが大きな収穫だ。
「たった3日間だけど、僕にとってはすごく大きな3日間。来年の本番につながる。100点ではないにしろ、いい点数を自分であげられる」。五輪金メダリストが取り戻した自信と笑顔。東京五輪で完全復活へ、その道筋が萩野には見えている。