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石川祐希イタリアで拓く世界一への道 バレー世界最高峰リーグ挑戦5シーズン目

 夢舞台の足音が聞こえ始めた冬。日本男子バレーボールのエース・石川祐希(24)は、イタリア北部の古都・パドヴァを拠点に戦いの日々を送っている。世界最高峰リーグに挑戦して、5シーズン目。その存在は同リーグでも日に日に大きくなりつつある。東京五輪まであと200日を切る中、その戦いと思いに迫った。

 今季、石川は戦いの場を中堅クラブのパドヴァに移した。昨季、2部降格となったシエナでプレーしたが、個人としてリーグ12位の376点をマーク。下位に沈んだチームの中で、その奮闘ぶりは光った。このオフ、上位チームからの誘いもあった。また、東京五輪に向けて、日本国内でのプレーを勧める声もあった。それでも再びイタリアに渡ることを決めたのは「世界一になりたいから。イタリアで挑戦することや学ぶことは、きっと日本代表にも還元できる」という思いからだ。

 チームへの適応は順調だ。イタリア語を覚えコミュニケーションが上達したこともあるが、それはこの数年で石川自身がつかみ取った成果でもある。シエナでの得点源としての存在感、そして日本代表での活躍もあり「僕の名前を知ってくれている。ステップアップできている実感がある」。今季リーグ序盤を終え、3度のマンオブザマッチを含め、早くもチームの中心選手としての地位を確立してきている。能力の高い選手がそろうパドヴァ。第7節で“4強”の一つであるトレンティーノを下したように、上位を打ち破るポテンシャルを秘める。ヒリつくような試合が続く中、昨年よりも、より勝利を求められる環境に1人の選手としてやりがいを感じている。

 現在、取り組んでいるのが運動量の強化だ。昨秋の日本代表として戦ったW杯。連戦の中、「重くなった」と終盤に疲労でパフォーマンスが上がらない試合があった。今季パドヴァではブロックフォローや2段トスへの反応など、求められる役割は多い。「とにかく一つ一つ体に覚えさせています」。これは代表での戦いにもつながる。「世界で勝っていくため。海外に比べて日本は身長が低い。より動いていかないと」

 過酷なシーズンを戦い抜く体作りも、着実に手応えを感じている。それまではけがに苦しむ時期が多かったが、昨季から明治と栄養サポート契約を結び栄養士の指導のもとで、自炊を多く取り入れた。「体への意識が変わった」。状態に合わせて、必要な栄養素を考える。試合、練習でのパフォーマンスはもちろん、回復度の違いも実感している。現在は週2回のウエートトレーニングをこなし、よりパワーをつけるために、体重を増やすことも心がけている。自炊の主食は米。肉、魚でたんぱく質を取り、ビタミンは野菜から。補食も欠かさない。凝った料理はまだできないが「お肉と魚を買って焼いて、野菜スープ。自炊に関しては味より、まず食べることが第一優先」。すべては日々の戦いのために。

 昨季から石川のプレーは変わったように見えた。代表で帰ってきた際、これまで以上にチームをけん引する意志がはっきりとプレーや周囲との対話の中ににじむ。「それは僕自身も感じています。シエナで戦って、我を出すことの大切さを知った。まだまだ技術不足ですけど、プレースタイルを意識してもらうためにも、自分を出していくことが重要」。プロ1年目の昨季、多国籍だったチームの中で、自分を出す事の重要性を学んだ。自分のプレーで結果を残せばトスが集まる。逆に結果を残せなければ、次はない。シビアな世界の中で、自然とまとう雰囲気は変わっていった。

 石川には“対世界”を意識する上で、きっかけとなった経験がある。4年前のリオ五輪。観客席から最高峰の戦いを見届けた。「どの国の選手も普段とはパフォーマンスが全然違った」。強烈な印象を残したのは準決勝イタリア対米国。劣勢に立たされたイタリアがエース・ザイツェフの強烈な3連続サービスエースで流れを変え、逆転勝ち。それまで「一つの大会」としか見ていなかった舞台への意識は変わった。日本は最終予選で敗れていた。「他の国の選手は目の色が違った。対抗するには、それ以上に思いをかけないと」

 「メダル」を目標に掲げた昨秋のW杯。石川らの奮闘及ばず、4位に終わった。足りなかったものは何か。「一番思うのは、目指す場所が明確ではなかった」。選手、監督、スタッフ。全員がメダルという目標を共有できたわけではなかった。強豪国相手に健闘はしたが、実際には確かな差を感じる結果。大会後、選手間で話し合った。「ここからは各個人が、1分1秒、どれだけ自分のプレーを磨けるか」。今季再集合するとき、全員のベクトルが同じ方向を向いていると信じている。

 迫る東京五輪。日本のバレー界にとってターニングポイントになる。高まる期待は感じている。「結果次第で日本のバレーが大きく変わる。なんとしても結果を出したい」。ここまで支えてくれてきた人たちに恩返しの場。かつてのように人々がバレーに夢中になる、そんな熱狂を生み出せるか。

 昨秋のW杯。くしくも同日程でラグビーW杯が行われていた。勝利を収めても、メディアにはラグビーの結果が大きく取り上げられた。「悔しい思いはあった。バレーも、もっとって」。だから何よりも目に見える結果が欲しい。「やるからにはメダルを目指していきたい。もう一度日本代表として集合した時に、目標を決めることになる。そこまでに個人個人がどれだけレベルアップできるか」。自分の可能性を、そして仲間を信じ、今はイタリアで研さんを積む。

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