紀平梨花「やりたいな」心揺れた4回転回避…圧巻Vで“挑戦する勇気”との戦いへ

 「フィギュアスケート・全日本選手権」(21日、代々木第一体育館)

 世界選手権(3月、モントリオール)の代表選考を兼ねて行われ、女子は昨季のGPファイナル覇者でショートプログラム(SP)1位の紀平梨花(17)=関大KFSC=がフリーも1位の155・22点、合計229・20点で初優勝を飾った。日本スケート連盟の基準を満たし、世界選手権代表に決まった。SP4位だった樋口新葉(18)=明大=がフリー2位の合計206・61点で2位、SP7位の川畑和愛(ともえ・17)=N高東京=が3位に入った。平昌五輪代表でSP2位の宮原知子(21)=関大=は4位、昨季の覇者、坂本花織(19)=シスメックス=は6位だった。

 苦渋の選択で悲願を達成した。紀平がほぼミスのない演技で国際スケート連盟(ISU)非公認ながら“自己ベスト”を更新し、3度目の全日本で初優勝を果たした。国際大会で実績を残しても心にトゲのように引っかかっていた、たった一つのタイトル。「絶対に1試合も外したくない」という一念で、演技直前に冒頭の4回転サルコーを回避した。

 大会前には高い精度を保っていた新技だったが、今大会の公式練習で成功率が落ちていた。しかも、この日の朝の練習では得意のトリプルアクセルが抜けたり転倒したりと不調は明らかだった。演技前に浜田美栄コーチから4回転回避を提案されたが、それでも「やりたいな」と心は揺れた。演技直前の6分間練習でトリプルアクセルが修正できたことで「絶対にできることをやる。その時最高の演技ができるかどうか」と迷いを振りきった。

 フィギュアスケート選手にとってクリスマスにトップ全員が集結する全日本の舞台は特別。紀平も子どもの頃から関西で行われる大会には必ず足を運び、大好きな浅田真央のトリプルアクセルを目の前で見て心を躍らせた。憧れの“真央ちゃん”の最後の16年全日本は、大阪・東和薬品ラクタブドームで見届けた。母の実香さんは「目の前で見てわーっと感動した。あの舞台が夢だったと思う」と振り返る。それほどほしかった勲章だった。

 直前の宮原や坂本らライバルはミスで順位を下げた。観客のため息が聞こえる中で「私もすごく調子が悪かったけど、集中してあきらめずにやろうと思った」と紀平。「そこは成長したかな」と自身に及第点を与える。

 それでも「4回転を入れたいという気持ちはすごく強かったので、悔しさはある。今回は挑戦できる場でもあった」と手放しでは喜んでいない。代表となった世界選手権では、左足の故障で封印している3回転ルッツを戻し「アクセル、ルッツ、4回転も入れてSP、フリーでそろえたい」と最強プログラムを視野に入れる。ロシア勢と戦う大舞台への切符は、必ず「挑戦する勇気」を与えてくれる。

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