関学大アメフト部OB藤吉記者が恩師・鳥内監督へ感謝のメッセージ

 「アメフト・甲子園ボウル、関学大38-28早大」(15日、甲子園球場)

 西日本代表の関学大(関西2位)が東日本代表の早大(関東)を38-28で下し、大会史上最多を更新する2年連続30度目の優勝を果たした。第3Q終了間際にこの日2度目の逆転を許して27-28とされたが、第4Qにチーム一丸で11点を奪って再逆転。今シーズン限りで勇退する鳥内秀晃監督(61)に、最後の学生日本一を贈った。1993年から96年に関西学院大アメリカンフットボール部のQBなどでプレーしたデイリースポーツ編集局整理部の藤吉裕久記者(45)が、今季限りで退任する恩師に惜別と感謝のメッセージを送った。

  ◇  ◇

 「おうっ!お前ら前半、後半先発どっちがするかジャンケンで決めろ」。小さな会議室でのミーティング後に鳥内監督が放った一言。春のシーズンとはいえ村岡先輩とともに驚き、勝った私が前半、後半どちらを選んだのかさえ覚えていない。ただ二人とも「そんなんで、ええの~?」と口をそろえた。ユーモアあふれる静かなる闘将といったところか。ほとんどの選手は「監督」とは呼ばず「鳥内さん」と呼ぶ。

 「関西学院大学アメリカンフットボール部」は確かに厳しい。朝早くからミーティングがあり、練習後には筋トレ。暗黙の了解として「1年中起きてる間はフットボールのことだけ考えろ」というものもあった。ただ、この厳しさは選手間で決め合ったこと。鳥内さんから厳しい練習や条件を出されたことはない。「…をしろ」とは一切言わない。「…しとかなあかんで~」「…はこうちゃうか?」と選手に語りかけて考えさせる。これこそが鳥内流なのだ。

 練習中にファンブルなど選手がミスをしても声を荒げ、怒ったことがない。そして褒めることもしない。4年間一度もそういう姿を見かけなかった。怒ると選手が「オレの顔色を見るようになる」。褒めると「オレに褒められようとして練習する」。1日でたった2時間弱の全体練習。常にヤルかヤラレルかの真剣勝負だからこそ「一切の邪念を捨ててボールを追え」。そうでなければ常勝軍団は作れないんだと。

 合宿の最終日など自宅が遠い監督は選手より早く帰ることがあった。「じゃあな、お先。お前らもはよ帰って休みや」と少し意地悪な笑顔で去っていく。さらに続くビデオ分析などでまだ2、3時間帰れないのを分かっているからこそ、「お前ら頑張れよ」というエールなのだ。こういう姿を見て、緊張がほぐれ、「よし!!もう少し頑張ろう」と現役時代にはなったものだ。多くを語らず、自分の姿で選手をヤル気にさせる術を知り尽くした監督だった。

 忙しい正月を迎えられるのは日本でたった2チーム。監督、コーチともに「幸せなこと」と口をそろえる。ラストバトルは日本一の称号を奪い合う3日のライスボウル。勝っても負けても全てを出し切った選手たちの中心で優しくほほ笑む鳥内さんの姿が目に浮かぶ。

 ほぼ半世紀、自分の生活を犠牲にしてフットボールに捧げるというのは並大抵のことではなかっただろう。改めて感謝するとともに、長年の指導、おつかれさまでした。

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